日本消化器外科学会雑誌
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原著
腹腔鏡補助下胃切除術における肝圧排法の検討
中村 一郎伊藤 誠二三澤 一成伊藤 友一金光 幸秀
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2012 年 45 巻 6 号 p. 583-589

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抄録
 目的:腹腔鏡補助下胃切除術(laparoscopy-assisted gastrectomy;以下,LAGと略記)時に行う肝圧排法の操作性と術後肝機能に及ぼす影響を明らかにする.対象と方法:当院で施行したLAG症例で,ペンローズドレーンによる挙上(以下,P法と略記)13例,屈曲型リトラクターによる圧排(以下,S法と略記)19例,Nathanson liver retractorによる圧排(以下,N法と略記)82例を対象とした.肝圧排の所要時間,術前,術後1,7日目のAlanine Aminotransferase(以下,ALTと略記)値を検討した.結果:肝圧排の所要時間は,P法14.1分,S法3.8分,N法2分で,N法はP法,S法それぞれと比較して有意に短時間で肝圧排が可能であった(p<0.0001).ALT値の推移は,3群とも術前より術後1日目には有意に上昇し,術後7日目には術後1日目に比較して有意に低下していた.術前値に対する術後1日目ALT値の変化率は,P法よりN法で有意に低値を示した(p=0.0071).しかし,術後1日目ALT値について,200IU/l以上の症例は,P法では認めなかったが,S法,N法には,それぞれ4例(21.1%),7例(8.5%)認めた.結語:N法は速やかに肝圧排できる有益な方法ではあるが,術後肝機能障害に留意する必要がある.
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