症例は76歳の男性で,胃癌術後外来通院中に施行した腹部CTで盲腸内にリング状に造影される腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では盲腸内に突出する腫瘍性病変を認め,中心部陥凹しており,虫垂根部の腫瘍が盲腸内に翻転したものと思われた.生検にて高度異型腺腫を認め,虫垂腫瘍(腺腫もしくは癌)による虫垂重積症と診断した.開腹時,虫垂根部が盲腸内に陥入している不完全型虫垂重積症を認め,回盲部切除術およびリンパ節郭清を施行した.病理組織検査では虫垂根部を中心に絨毛腺管腺腫を認め,一部に壁深達度Mの高分化腺癌が併存していた.本邦で虫垂腺腫・癌を誘因とする虫垂重積症は検索しえたかぎり本例を含め26例であった.癌は17例で,そのうち10例(58.8%)が深達度M・SMであり,縮小手術の可能性が示唆されるが,なかには腹膜播種やリンパ節転移例もあり,その適応は慎重に行う必要があると思われる.