日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
早期虫垂癌による不完全型虫垂重積症の1例
明石 諭山田 行重杉森 志穂伊藤 眞廣島田 啓司吉川 高志
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 45 巻 6 号 p. 664-671

詳細
抄録

 症例は76歳の男性で,胃癌術後外来通院中に施行した腹部CTで盲腸内にリング状に造影される腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では盲腸内に突出する腫瘍性病変を認め,中心部陥凹しており,虫垂根部の腫瘍が盲腸内に翻転したものと思われた.生検にて高度異型腺腫を認め,虫垂腫瘍(腺腫もしくは癌)による虫垂重積症と診断した.開腹時,虫垂根部が盲腸内に陥入している不完全型虫垂重積症を認め,回盲部切除術およびリンパ節郭清を施行した.病理組織検査では虫垂根部を中心に絨毛腺管腺腫を認め,一部に壁深達度Mの高分化腺癌が併存していた.本邦で虫垂腺腫・癌を誘因とする虫垂重積症は検索しえたかぎり本例を含め26例であった.癌は17例で,そのうち10例(58.8%)が深達度M・SMであり,縮小手術の可能性が示唆されるが,なかには腹膜播種やリンパ節転移例もあり,その適応は慎重に行う必要があると思われる.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top