抄録
症例は78歳の男性で,上腹部違和感を主訴に近医を受診した.腹部USにて肝腫瘍を指摘され,当院を紹介受診した.腹部CTでは肝S4からS5にかけて最大径6.7 cmの腫瘍を認めた.腫瘍のS5寄りの部分には被膜様構造がみられ,早期に濃染し,遅延相では低吸収域となった.S4寄りの病変部は周囲との境界が不明瞭で,辺縁から徐々に造影された.MRCPではS5の胆管枝への浸潤も疑われた.腫瘍マーカーはPIVKA-IIのみが854 mAU/mlと上昇していた.以上より,混合型肝癌を第一に考え,肝拡大右葉切除術,肝外胆管切除兼胆道再建術,肝十二指腸間膜内リンパ節郭清を施行した.病理組織学的には,肝細胞癌の一部に肉腫様変化をみたが,腺癌成分は認めなかった.術後37か月が経過し,再発なく社会復帰している.比較的まれな肉腫様変化を伴った肝細胞癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.