2013 年 46 巻 5 号 p. 393-399
根治切除不能進行食道癌に対する化学放射線療法後に,狭窄や瘻孔を認めた際の経口摂取の一手段として食道バイパス手術がある.当科で経験した食道バイパス手術症例における臨床学的特徴および治療成績を検討した.2001年~2009年に根治切除不能進行食道癌に対し化学放射線療法を施行し,バイパス手術を施行した10例を対象とした.バイパス臓器は胃管8例,結腸2例だった.腫瘍の状況は,狭窄/瘻孔/狭窄および瘻孔がそれぞれ5例/4例/1例だった.術後合併症は5例(50%)に発生したが,保存的治療で軽快した.また,全例術後経口摂可能となった.術後の経口摂取までの期間の中央値は20日(9~90日)で,経口摂取開始後の生存期間の中央値は130日(48~293日)だった.食道バイパス手術は,適切な患者において適応されれば,重篤な合併症もなく,経口摂取の改善には有効な手段の一つであると考えられた.