日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
自然消失した十二指腸癌肝転移の1例
田中 圭大塚 将之清水 宏明吉留 博之加藤 厚古川 勝規吉富 秀幸岸本 充中谷 行雄宮崎 勝
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2014 年 47 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

 症例は61歳の女性で,嘔気を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡で十二指腸第2部に潰瘍性病変を認め,生検で低分化腺癌と診断された.CTで門脈前後区域枝分岐部に接する造影効果の乏しい腫瘤を認め,十二指腸癌,肝転移の診断で全身化学療法が提案された.本人・家族がセカンドオピニオンを希望され,2病院を受診したのち症状出現から4か月後に当院紹介となった.精査で十二指腸癌,および肝炎症性偽腫瘍などを含めた肝腫瘤の診断にて膵頭十二指腸切除術,拡大肝後区域切除術を施行した.病理組織学的検査で十二指腸および肝臓ともに癌は認めず,壊死巣を伴う肉芽腫を認めた.壊死巣では術前に十二指腸生検で見られた癌細胞に類似する壊死細胞が認められ,免疫組織学的に壊死細胞はcytokeratin陽性であった.以上から,十二指腸癌および肝転移が自然消失したものと考えられた.十二指腸癌の自然消失の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.

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