日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
編集後記
編集後記
掛地 吉弘
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2015 年 48 巻 1 号 p. en1

詳細

2015年が幕を開けました.21世紀に入って10数年が経ち,日々の生活の中で情報通信技術の高速化を実感します.求める情報がPCやtablet, 携帯端末で瞬時に手に入るようになり,外科医の仕事環境も効率化が進んでいます.最高の質を追求する日本消化器外科学会雑誌の編集委員会も昨年からweb会議になりました.実際には離れた場所にいる距離を感じさせない熱い議論が毎月行われています.投稿された論文をより良いものにしようと指導に熱心な編集委員の先生方がそろっており,自分の専門領域外でも聞いて勉強になることが多々あります.

外科医にとって,知識や情報を集める作業とともに,自ら情報を発信する,即ち論文を書く作業も大切です.目の前の患者さんに世界最高レベルの診療を提供できるか否か,日々の研鑽が活きてきます.原著を書くことで,そのテーマが世界の中でどのような位置にあるのか,主張する結論でどう変わるのか,科学的に示す過程が体験できます.データを客観的に解析しているか,考察の論点が明確で文章が流れになって読者に訴えているか,随所で議論と推敲を重ねることで完成度が増していきます.考察で段落ごとに最初の一文をその段落の論点がわかるtopic sentenceにするのも執筆技巧の一つです.一方で症例報告は,貴重な病態を提示してくれた患者さんに感謝して,皆に情報を共有してもらう利点があります.

日々の臨床を論文に繋げる作業は,その作成過程で多くの同僚・先輩方の指導を受け,得るものも多いと思われます.publishされた論文は業績として残り,多くの人に読み継がれていきます.論文を書くことが臨床の励みにもなる環境が理想的であり,個人の動機づけと職場の協力も必要です.本号には著者の方々と編集委員の共同作業で仕上がった原著1編,症例報告10編が掲載されています.いずれも臨床の場に貴重な情報を提供してくれるでしょう.

医療は進歩し,患者さんにとって優しい治療を考える時代になっています.外科医が存分に活躍できるように,仲間を募り,優れた伝統を継承し,新しいものを取り入れる努力を続けていきたいと思います.今年は羊年です.忙しすぎて眠りに落ちる前に羊を数えることもない外科医の生活も良い方向に変わっていくことを望みます.

本年もよろしくお願い申し上げます.

(掛地 吉弘)

2015年1月1日

 

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
feedback
Top