日本消化器外科学会雑誌
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特別報告
National Clinical Database(消化器外科領域)Annual Report 2014
若林 剛今野 弘之宇田川 晴司海野 倫明遠藤 格國崎 主税武冨 紹信丹黒 章橋本 英樹正木 忠彦本村 昇吉田 和弘渡邉 聡明宮田 裕章神谷 欣志平原 憲道後藤 満一森 正樹一般社団法人National Clinical Database
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2015 年 48 巻 12 号 p. 1032-1044

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1.Annual report作成の背景

2010年に「一般社団法人National Clinical Database(NCD)」が設立され,2011年1月より登録が開始されたNCDデータベース事業は,我が国で一般外科医が行っている手術の95%以上をカバーしている.外科手術全体で年間120数万件が入力され,2013年12月末時点で400万件を越える手術情報が3,745施設から集積された.この事業が当初の予想以上に順調な進展をみせているのは,ひとえに多忙な診療業務の中で登録を行った現場の外科医たちの努力によるものである.

NCDに登録されたデータの利活用も順調に行われており,手術成績からみた医療評価により本邦の消化器外科医療の質向上が期待される.しかし,そのために最も重要なことは有益で客観性のあるデータの解析と公表であることは言うまでもない.一方で,データの信頼性,悉皆性を担保することが必要であり,データの公表が消化器外科医療そのものへ与える影響を十分考慮することも重要である.

日本消化器外科学会データベース委員会では主な事業として,NCDデータを利用した消化器外科領域新規研究課題の審査・採択および進捗管理,NCDに登録されるデータの品質管理,そしてNCDデータ入力作業へのfeed backの一環として,主たる8 術式についてリスクモデルの開発・評価を行いRisk CalculatorなどのNCD Feedback機能をリリースした.そして,2011年と2012年に入力された主要データを報告したAnnual Report 2011–20121)に続き,今回は2013年に施行され登録された50万件を越える消化器外科手術情報をもとにAnnual Report 2014を作成した.本報告が本邦の消化器外科医療の質向上への一助となれば幸いである.

2.これまでの概要

2011年の医療水準評価8術式の死亡率を含めた概要については,既に食道切除再建術2),胃全摘術3),結腸右半切除術4),低位前方切除術5),膵頭十二指腸切除術6),肝切除術7),胃切除術(幽門側)8),急性汎発性腹膜炎手術9),総説10)として論文化された.これらの論文に基づくリアルタイムフィードバック(患者さんの術前情報,術中情報をもとにそれぞれの項目のリスク因子から死亡率を予測する)とRisk Calculator(手術を受ける患者さんの術後30日死亡予測発生率,手術関連死亡予測発生率を計算する)機能,そして,施設診療科の患者背景とパフォーマンスの全国比較(患者さんの術前リスクに関する項目の集計結果,および登録データに基づいて推定された自施設診療科の予測死亡率から,全国と比較し自施設診療科がどのような傾向,特徴をもっているか把握する)をNCD Feedback 機能として,食道切除再建術,胃全摘術,結腸右半切除術,低位前方切除術,膵頭十二指腸切除術,肝切除術についてリリースした.さらに,2011,2012両年のデータを用いて,医療水準評価8術式に関する合併症の論文化を各々の術式について進めているところである.

今後引き続き,より詳細なデータの公表により本邦の消化器外科医療の現況を周知していく予定である.

3.対象と方法

今回対象としたのは,NCDに登録された症例データのうち,一般社団法人日本消化器外科学会が消化器外科専門医認定審査のための消化器外科専門医修練カリキュラムに定めた手術(新手術難易度区分)に関するデータである.115の消化器外科専門医術式については既にAnnual Report 2011–2012で報告したデータも2011年と2012年に分け,2011年,2012年,2013年のデータを対象とした.さらに,これらのうち医療水準を測るうえで重要となる術式については,主たる8術式として115術式とは別に検討した.

今回は,115の消化器外科専門医術式に関する手術症例数と死亡率,そして主たる8術式に関する手術症例数と死亡率における,2011年,2012年,2013年の経年的変化を明らかにした.また,主たる8術式に関する患者性別および年齢区分,施設区分および専門医関与の割合を比較検討した.

4.データ解釈における注意点

今回の報告においては,データの解釈上,以下の点での留意が必要である.

(1)NCDでは1症例に対して最大8術式までの登録が可能となっているため,「5.消化器外科専門医115術式に関する調査」における手術件数の合計が実際の手術症例数の合計とはならない.

(2)患者年齢,性別,術後30日状態の登録に不備のある症例は除外した.

(3)同時に複数の術式が施行された症例も全て術式ごとに集計した.

(4)術後30日死亡は,入院中,退院後にかかわらず術後30日以内の全ての死亡を含み,手術関連死亡は,術後30日死亡と術後90日以内の在院死亡を合わせたものである.

5.消化器外科専門医115術式に関する結果

2011年1月1日から2013年12月31日までの3年間にNCDに登録された消化器外科専門医115術式の総数は1,494,934例で,臓器別にみると食道24,707例(1.7%),胃・十二指腸218,509例(14.6%),小腸・結腸534,630例(35.8%),直腸・肛門140,745(9.4%),肝75,458例(5.0%),胆354,858例(23.7%),膵45,407例(3.0%),脾12,260例(0.8%),その他88,360例(5.9%)であった(1).男女比は全体で約6:4であり,年齢区分でみると全体の16.0%が80歳以上であるが,特に胃・十二指腸,小腸・結腸,直腸・肛門では80歳以上の比率が高かった(11).

表1  消化器外科専門医115術式の臓器別手術件数と性別,年齢区分(2011年,2012年,2013年総計)
臓器 手術件数 性別の比率(%)   年齢区分の比率(%)
  60歳未満 60歳以上65歳未満 65歳以上70歳未満 70歳以上75歳未満 75歳以上80歳未満 80歳以上
食道 24,707 81.8 18.2   21.7 18.9 20.7 19.6 12.7 6.3
胃・十二指腸 218,509 68.1 31.9   19.2 14.0 14.7 17.1 16.6 18.4
小腸・結腸 534,630 56.7 43.3   36.4 10.5 10.9 12.4 12.4 17.4
直腸・肛門 140,745 58.4 41.6   21.7 14.9 14.8 15.7 14.4 18.6
75,458 66.4 33.6   21.8 15.5 16.9 18.4 17.3 10.0
354,858 55.1 44.9   33.2 13.5 12.6 14.0 13.1 13.6
45,407 59.9 40.1   19.6 14.8 17.3 20.0 17.9 10.5
12,260 61.5 38.5   32.8 15.6 15.2 15.5 12.7 8.1
その他 88,360 54.3 45.7   30.2 11.4 12.0 13.8 14.2 18.3
1,494,934 59.1 40.9   29.9 12.8 13.0 14.5 13.9 16.0
図1 

消化器外科専門医115術式の臓器別手術件数と性別(2011年,2012年,2013年総計)

手術の行われた施設区分では,全体では約7割が認定施設で行われ,特に食道(87.0%),肝(82.9%),膵(82.3%),脾(80.0%)では認定施設で行われた手術の比率が高かった.麻酔科医関与の比率は90.9%であり,66.4%の手術が専門医の関与のもとに行われていた(2).食道(63.3%),肝(56.6%),膵(59.4%)は専門医が術者となる率が高かった(2).

表2  消化器外科専門医115術式における臓器別にみた施設区分と麻酔科医,専門医の関与(2011年,2012年,2013年総計)
臓器 手術件数 施設区分の比率(%) 麻酔科医関与
の比率(%)
専門医関与
の比率(%)
術者(%)
認定施設 関連施設 その他 専門医 非専門医
食道 24,707 87.0 6.3 6.7 97.3 87.5 63.3 36.7
胃・十二指腸 218,509 73.0 17.4 9.6 93.2 71.1 36.2 63.8
小腸・結腸 534,630 69.7 20.2 10.1 88.9 60.8 25.8 74.2
直腸・肛門 140,745 69.6 19.7 10.7 86.4 69.4 38.0 62.0
75,458 82.9 9.9 7.2 95.7 86.2 56.6 43.4
354,858 66.8 22.1 11.1 92.0 63.5 26.7 73.3
45,407 82.3 10.2 7.5 96.0 86.5 59.4 40.6
12,260 80.0 11.7 8.3 95.1 75.5 44.1 55.9
その他 88,360 73.8 17.4 8.8 91.0 61.9 27.9 72.1
1,494,934 71.1 18.9 9.9 90.9 66.4 32.1 67.9

総手術件数は432,740(2011年),517,084(2012年),545,110(2013年)と経年的に増加し,術後30日死亡率と手術関連死亡率は,それぞれ1.5%,2.9%(2011年),1.5%,2.8%(2012年),1.5%,2.7%(2013年)であった(323).消化器外科専門医115術式の臓器別の死亡率を4に示す.

消化器外科専門医115術式の術式別手術件数を,登録年別に412に臓器別に示した.

表3  消化器外科専門医115術式における臓器別の手術件数と死亡率(2011年,2012年,2013年総計)
臓器 手術件数 術後30日死亡数/率(%) 手術関連死亡数/率(%)
食道 24,707 325/1.3 921/3.7
胃・十二指腸 218,509 3,136/1.4 6,833/3.1
小腸・結腸 534,630 10,230/1.9 18,776/3.5
直腸・肛門 140,745 1,374/1 2,336/1.7
75,458 901/1.2 1,779/2.4
354,858 1,560/0.4 3,158/0.9
45,407 599/1.3 1,305/2.9
12,260 246/2 414/3.4
その他 88,360 3,963/4.5 6,526/7.4
1,494,934 22,334/1.5 42,048/2.8
図2 

消化器外科専門医115術式の臓器別手術件数の年次推移

図3 

消化器外科専門医115術式の手術件数と死亡率の年次推移

図4 

消化器外科専門医115術式の臓器別の死亡率(2011年,2012年,2013年総計)

表4  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(食道)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
食道 ​頸部食道周囲膿瘍ドレナージ 23​ 27​ 34​
​食道縫合術(穿孔,損傷) 156​ 204​ 198​
​胸部食道周囲膿瘍ドレナージ 22​ 23​ 18​
​食道異物摘出術 19​ 21​ 26​
​食道憩室切除術 27​ 32​ 35​
​食道良性腫瘍摘出術 61​ 69​ 66​
​食道切除術(切除のみ) 388​ 506​ 580​
​食道再建術再建のみ(胃管再建) 699​ 844​ 888​
​食道瘻造設 97​ 106​ 128​
​食道噴門形成術 321​ 418​ 392​
​アカラシア手術 77​ 109​ 84​
​食道切除再建術 4,916​ 5,946​ 5,694​
​食道再建術再建のみ(結腸再建) 65​ 56​ 63​
​食道バイパス術 93​ 110​ 137​
​食道気管支瘻手術 6​ 5​ 9​
​食道二次的再建術 276​ 343​ 290​
表5  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(胃・十二指腸)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
胃・十二指腸 ​胃切開・縫合術 52​ 69​ 74​
​憩室,ポリープ切除術(内視鏡的切除は除く) 156​ 186​ 231​
​幹迷走神経切離術 3​ 6​ 6​
​胃腸吻合術(十二指腸空腸吻合術を含む) 4,651​ 5,330​ 5,571​
​胃瘻造設術(PEGを除く) 1,717​ 1,698​ 1,633​
​幽門形成術 116​ 129​ 115​
​胃捻転症(軸捻症)手術・吊り上げ固定術手術 40​ 38​ 39​
​胃縫合術(胃破裂に対する胃縫合,胃・十二指腸穿孔
   に対する縫合閉鎖術,大網充填術,大網被覆術を含む)
4,707​ 5,738​ 5,669​
​胃局所切除術(楔状切除を含む) 2,466​ 3,108​ 3,233​
​胃切除術(幽門側胃切除術,幽門保存胃切除術,
   文節(横断)胃切除術を含む)
34,160​ 38,750​ 39,957​
​選択的迷走神経切離術 8​ 8​ 10​
​胃全摘術(噴門側胃切除術を含む) 18,652​ 21,122​ 19,035​
​左上腹部内蔵全摘術 12​ 4​ 10​
表6  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(小腸・結腸)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
小腸・結腸 ​腸切開・縫合術 2,982​ 3,505​ 4,025​
​腸重積整復術(観血的) 172​ 250​ 234​
​小腸部分切除術(良性) 5,792​ 7,602​ 8,564​
​回盲部切除術(良性) 3,238​ 4,104​ 4,313​
​結腸部分切除術・S状結腸切除術(良性) 4,946​ 6,239​ 6,626​
​虫垂切除術 43,437​ 51,316​ 54,421​
​腸瘻造設・閉鎖術(腸管切除なし) 15,192​ 19,371​ 21,600​
​小腸切除術(悪性) 2,448​ 2,703​ 3,016​
​回盲部切除術(悪性) 5,492​ 9,274​ 10,327​
​結腸部分切除術・S状結腸切除術(悪性) 25,034​ 29,863​ 31,495​
​結腸右半切除術 17,890​ 21,034​ 21,814​
​結腸左半切除術 5,241​ 5,347​ 5,644​
​結腸全摘除術 2,846​ 3,131​ 1,892​
​腸閉塞症手術(腸管切除を伴う) 5,117​ 6,496​ 7,412​
​腸瘻造設・閉鎖術(腸管切除あり) 11,008​ 14,162​ 16,853​
​大腸全摘回腸肛門(管)吻合術 308​ 413​ 441​
表7  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(直腸・肛門)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
直腸・肛門 ​経肛門的直腸腫瘍摘出術 2,483​ 3,300​ 1,657​
​直腸脱手術(経肛門的) 1,802​ 2,461​ 2,488​
​直腸切断術(良性) 300​ 386​ 2,196​
​高位前方切除術 7,053​ 8,920​ 8,985​
​Hartmann手術 3,562​ 4,614​ 4,865​
​直腸脱手術(腹会陰式) 659​ 996​ 1,119​
​直腸・肛門悪性腫瘍切除術(経肛門的 ) 1,517​ 1,037​ 898​
​肛門括約筋形成術(組織置換による) 969​ 1,378​ 1,721​
​直腸切断術(悪性) 5,308​ 5,828​ 4,474​
​低位前方切除術 16,984​ 20,321​ 21,096​
​骨盤内臓器全摘術 359​ 389​ 412​
​直腸・肛門悪性腫瘍切除術(後方アプローチ) 65​ 74​ 69​
表8  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(肝)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
​肝縫合術 172​ 202​ 161​
​肝膿瘍ドレナージ術(経皮的手技を除く) 42​ 47​ 54​
​肝囊胞切開.縫縮.内瘻術 425​ 535​ 606​
​肝部分切除術 9,431​ 10,919​ 10,708​
​肝バイオプシー(経皮的手技を除く) 122​ 264​ 176​
​肝凝固壊死療法術(経皮的手技を除く) 1,958​ 2,122​ 1,083​
​肝外側区域切除 1,390​ 1,632​ 1,773​
​食道・胃静脈瘤手術 94​ 109​ 67​
​肝切除術(外側区域を除く区域以上) 7,434​ 8,239​ 7,937​
​系統的亜区域切除術 996​ 1,353​ 2,374​
​肝移植術 692​ 775​ 757​
​肝膵同時切除術 99​ 91​ 118​
表9  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(胆)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
​胆管切開術 142​ 163​ 174​
​胆囊切開切石術 1,094​ 1,093​ 750​
​胆囊摘出術 93,665​ 112,048​ 119,455​
​胆囊外瘻術 104​ 119​ 127​
​胆囊消化管吻合術 70​ 73​ 61​
​胆管切開切石術 3,682​ 4,117​ 3,880​
​胆道再建術 150​ 162​ 265​
​胆道バイパス手術 1,594​ 1,751​ 1,765​
​胆管形成術 201​ 180​ 192​
​十二指腸乳頭形成術 66​ 68​ 50​
​総胆管拡張症手術 217​ 240​ 254​
​胆汁瘻閉鎖術 43​ 42​ 42​
​胆囊悪性腫瘍手術(単純胆囊摘出術を除く) 869​ 1,013​ 929​
​胆管悪性腫瘍手術 1,268​ 1,426​ 1,202​
​胆道閉鎖症手術 18​ 18​ 16​
表10  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(膵)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
​膵囊胞外瘻術 29​ 27​ 13​
​膵管外瘻術 17​ 20​ 26​
​膵縫合術 22​ 17​ 21​
​膵部分切除術 126​ 148​ 202​
​膵体尾部切除術(良性) 1,018​ 1,398​ 1,372​
​膵囊胞消化管吻合術 81​ 71​ 59​
​膵(管)消化管吻合術 223​ 295​ 309​
​急性膵炎手術 94​ 117​ 104​
​膵石症手術 17​ 17​ 14​
​膵頭神経叢切除術 1​ 1​ 2​
​膵頭十二指腸切除術 8,305​ 9,329​ 10,068​
​膵体尾部切除術(悪性) 2,861​ 3,344​ 3,483​
​膵全摘術 348​ 408​ 423​
​十二指腸温存膵頭切除術 201​ 193​ 111​
​膵区域切除術 131​ 163​ 138​
​膵体尾側切除術 3​ 2​ 35​
表11  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数の年次推移(脾)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
​脾縫合術 22​ 35​ 26​
​脾摘術 3,564​ 4,063​ 4,457​
​脾部分切除術 23​ 44​ 26​
表12  消化器外科専門医115術式の術式別手術件数(その他)
臓器 難度 術式名 手術件数
2011年 2012年 2013年
その他 ​限局性腹腔膿瘍手術 2,526​ 2,944​ 3,231​
​試験開腹術 5,036​ 6,852​ 7,532​
​急性汎発性腹膜炎手術 7,753​ 9,177​ 10,447​
​腹壁ヘルニア手術 5,053​ 6,095​ 11,387​
​横隔膜縫合術 183​ 218​ 246​
​食道裂孔ヘルニア手術 511​ 602​ 725​
​後腹膜腫瘍手術 622​ 837​ 806​
​腹壁・腸間膜・大網腫瘍切除 979​ 1,398​ 1,402​
​消化管穿孔部閉鎖術 504​ 576​ 522​
​横隔膜裂孔ヘルニア手術 51​ 80​ 65​

6.主たる8術式に関する結果

2011年1月1日から2013年12月31日の3年間に行われた主たる8術式の手術件数は年次別(2011年,2012年,2013年)に,食道切除再建術 4,916例,5,946例,5,694例,胃切除術(幽門側)34,160例,38,750例,39,957例,胃全摘術 18,652例,21,122例,19,035例,結腸右半切除術 17,890例,21,034例,21,814例,低位前方切除術 16,984例,20,321例,21,096例,肝切除術(外側区域以外の区域)7,434例,8,239例,7,937例,膵頭十二指腸切除術8,305例,9,329例,10,068例,急性汎発性腹膜炎手術 7,753例,9,177例,10,447例であった(5).

図5 

主たる8術式の臓器別手術件数の年次推移

以後,2013年の症例数で検討すると,男女比は全ての術式で男性が多く,特に食道切除再建術,胃切除術(幽門側),肝切除術で男性が優位であった.また,胃切除術(幽門側),結腸右半切除術,急性汎発性腹膜炎手術では80歳以上の比率が高く,結腸右半切除術では4分の1以上が80歳以上であった(136).

表13  主たる8術式の手術件数と性別,年齢区分(2013年)
術式 手術件数 性別の比率(%)   年齢区分の比率(%)
  60歳未満 60歳以上
65歳未満
65歳以上
70歳未満
70歳以上
75歳未満
75歳以上
80歳未満
80歳以上
食道切除再建術 5,694 83.6 16.4   18.3 18.3 22.6 21.3 13.8 5.8
胃切除術(幽門側) 39,957 66.7 33.3   16.3 13.5 15.8 17.8 17.6 19. 0
胃全摘術 19,035 74.0 26.0   14.7 13.5 16.9 19.4 19.2 16.3
結腸右半切除術 21,814 50.6 49.4   13.0 10.0 13.4 17.6 18.9 27.1
低位前方切除術 21,096 64.2 35.8   23.8 16.5 17.4 16.9 13.5 11.8
肝切除術(外側区域以外の区域) 7,937 69.4 30.6   19.4 14.2 18.0 20.3 18.2 9.9
膵頭十二指腸切除術 10,068 61.4 38.6   15.2 13.8 18.4 22.4 18.7 11.6
急性汎発性腹膜炎手術 10,447 60.1 39.9   29.1 10.3 11.5 11.8 13.1 24.1
図6 

主たる8術式の手術件数と性別(2013年)

手術の行われた施設区分に関しては,おおむね7割以上が認定施設で行われ,特に食道切除再建術(92.9%),肝切除術(外側区域以外の区域)(88.1%)では認定施設で行われた手術の比率が高かった.麻酔科医関与の比率は全ての術式で90%以上であった.食道切除再建術,肝切除術(外側区域以外の区域),膵頭十二指腸切除術は90%前後が専門医の関与のもとに行われていたが,結腸右半切除術,急性汎発性腹膜炎手術の専門医関与の比率はそれぞれ69.7%,62.4%であった(1478).

表14  主たる8術式における施設区分と麻酔科医,専門医の関与(2013年)
術式 施設区分の比率(%) 麻酔科医関与の比率(%) 専門医関与の比率(%) 術者
認定施設 関連施設 その他 専門医(%) 非専門医(%)
食道切除再建術 92.9 5.9 1.2 98.0 90.8 66.6 33.4
胃切除術(幽門側) 76.6 19.2 4.1 93.6 76.1 40.6 59.4
胃全摘術 77.2 18.9 3.9 94.2 75.0 39.5 60.5
結腸右半切除術 72.1 22.3 5.6 92.9 69.7 32.6 67.4
低位前方切除術 76.3 19.5 4.2 93.7 75.5 44.3 55.7
肝切除術(外側区域以外の区域) 88.1 9.7 2.2 96.9 91.0 65.2 34.8
膵頭十二指腸切除術 85.9 11.7 2.4 96.0 87.9 60.5 39.5
急性汎発性腹膜炎手術 77.7 18.1 4.2 91.2 62.4 23.9 76.1
図7 

主たる8術式における施設区分(2013年)

図8 

主たる8術式における専門医の関与(2013年)

主たる8術式の死亡率を15に示す.急性汎発性腹膜炎手術以外では,術後30日死亡率は0.4から1.6%,手術関連死亡率は0.8から3.7%であった.急性汎発性腹膜炎手術の術後30日死亡率,手術関連死亡率はそれぞれ8.2%,13.5%であった(159).

表15 主たる8術式の手術件数と死亡率(2013年)
術式 手術件数 術後30日死亡数/率(%) 手術関連死亡数/率(%)
食道切除再建術5,69467/1.2%161/2.8%
胃切除術(幽門側)39,957239/0.6%542/1.4%
胃全摘術19,035169/0.9%428/2.2%
結腸右半切除術21,814280/1.3%538/2.5%
低位前方切除術21,09680/0.4%175/0.8%
肝切除術(外側区域以外の区域)7,937130/1.6%290/3.7%
膵頭十二指腸切除術10,068142/1.4%307/3.0%
急性汎発性腹膜炎手術10,447861/8.2%1,408/13.5%
図9 

主たる8術式の死亡率(2013年)

7.謝辞

稿を終えるにあたり,本事業の推進に多大なる貢献を頂きました日本消化器外科学会事務局,NCD関係各位,データ入力にご尽力いただきました医師およびデータマネージャー各位に深謝いたします.

8.利益相反

本事業に関連して,開示すべき利益相反はありません.

文献
 

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