2015 年 48 巻 4 号 p. 321-327
症例は73歳の女性で,膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy;以下,PDと略記)を施行,gemcitabineによる補助化学療法を行った.経口摂取不良が持続し,術後4か月に意識障害,低栄養,高アンモニア血症と著明な脂肪肝を認め入院となった.術前比16%の体重減少と,Child-Pugh分類14点の重症肝障害を認めた.PD後の非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;以下,NAFLDと略記)と診断,pancrelipaseの投与に加え経静脈および経管栄養の併用療法を行い,徐々に肝機能は改善,経口摂取量も増加し退院となった.術後8か月のCTでは脂肪肝は著明に改善した.PD後NAFLDによる肝性脳症の報告は少なく,栄養状態の改善と膵外分泌酵素の補充によって比較的速やかに肝障害が改善しえた貴重な1例と考えられた.