日本消化器外科学会雑誌
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編集後記
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宇山 一朗
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2015 年 48 巻 8 号 p. en8-

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日本消化器外科学会雑誌第48巻第8号をお届けします.浜松での第70回総会が終わり,日本列島全国各地で気温が35度を超える猛暑日が連日続いています.小生が住んでいる名古屋では猛暑日どころか,38度を超える超猛暑日(このような正式用語はありません)が人間のみならず,蝉にまで襲いかかっております.

蝉と言えば,照り返す真夏の昼間に騒がしいほど元気に鳴き続け,夏を痛感させる昆虫の代表ですから,さぞかし暑さには強いと信じておりました.しかし,先日,自宅の玄関先に一匹の蝉が仰向けに転がっていました.小生はてっきり蝉の死骸と思い,“蝉の命は一週間”ということを思い出し,蝉の人生の儚さを憂いておりました.妻は蝉が大嫌いなので,玄関先に蝉の死骸が転がっていては,発見した際には気絶するかもしれないと思い,この蝉をどけようとしたところ,小生が蝉の体に触った直後,蝉は息を吹き返し飛び去っていきました.おそらく,蝉はあまりの暑さに気絶していたのではないでしょうか?この話を妻にしたところ,蝉が暑さで気絶するなんて信じられないと申しておりましたが,翌日も玄関先に蝉が気絶しておりましたので,そっと触ったところ,昨日と同様に元気に飛び去っていきました.夏の風物詩である蝉をも気絶させる名古屋の猛暑は本当に恐るべしです.

さて,本号の掲載論文は10編であり,原著2編,症例報告7編,臨床経験1編です.原著論文は英文誌への投稿が多く,和文雑誌である本学会雑誌には症例報告の掲載が多いことは仕方ないと思います.しかし,多くの外科医は,症例報告から多くのことを学び,日常診療に役立ててきたことは紛れもない事実です.以前,ノーベル物理学賞を受賞された江崎玲於奈博士のご講演を拝聴した際に,「物理学を学ぶためには,lesson from the past,イノベーションや革新を生み出すためにはlesson from the future」と力説されていたことが脳裏に焼き付いています.外科の領域に置き変えて言うならば lesson from the pastのpastは先人が築き上げてきた解剖学,手術学,そして多くの症例報告論文ではないかと思います.多くの若手外科医が本学会雑誌から多くのことを学び,lesson from the futureを志していくことを切に願って,名古屋の猛暑と戦っている毎日です.

 

(宇山 一朗)

2015年8月1日

 

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