日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
膵癌術後難治性腹水に対しDenver shunt®を施行した3例
石毛 文隆貝沼 修鍋谷 圭宏滝口 伸浩池田 篤早田 浩明趙 明浩有光 秀仁柳橋 浩男山本 宏
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2016 年 49 巻 1 号 p. 49-57

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Abstract

膵癌術後難治性腹水に対し,Denver shunt®(以下,DSと略記)を施行した3例を経験したので報告する.症例は54歳の女性,81歳の男性,75歳の男性の3例である.手術は全例D2郭清を伴う幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(pylorus preserving pancreaticoduodenectomy)を施行しており,術後1~34か月に発症し保存的治療に抵抗性であった難治性腹水に対しDSを施行した.全例で腹水はDS後数日以内に激減し,腹部膨満症状は改善した.DS後の生存期間は2例で約1年,1例が46日であった.DSは膵癌術後の明らかな再発のない難治性腹水に対する治療の選択肢の一つとして有用と考えられた.

はじめに

膵癌術後には拡大郭清によるリンパ漏,低栄養,放射線療法によるリンパ管閉塞,癌性腹膜炎などさまざまな要因で難治性腹水を生じうる.通常は利尿剤,アルブミン投与でコントロール可能であるが,治療困難例においては著しくQOLが低下し,入退院を繰り返すことになる.Denver shunt®(以下,DSと略記)は一般的には末期肝硬変の難治性腹水や悪性疾患の癌性腹水に適応がある1).今回,我々は膵癌術後に難治性腹水を来し,DSを施行し良好な結果を得た3例を経験したので報告する.

症例

症例1:54歳,女性

主訴:腹部膨満

既往歴:特記事項なし.

現病歴:膵頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(pylorus preserving pancreaticoduodenectomy;以下,PPPDと略記)を施行し,進行度はT3,N3,M0,Stage IVb(膵癌取扱い規約第6版)であった.術後はゲムシタビンとUFTの併用療法を行っていたが,2年1か月の時点で血小板の減少と腹水貯留を認めたため中止となった.腹水に対し利尿剤,アルブミン製剤の投与,腹水穿刺を行ったが,再貯留を繰り返していた.

腹部膨満症状改善のためPPPD術後2年11か月目にDSを施行した.

血液検査所見:ALB 2.6 g/dl,CA19-9 46 U/ml,CEA 4.5 ng/ml

腹水細胞診:陰性(class II)

CT所見:再発所見は認めず,腹水が大量に貯留していた(Fig. 1A).

Fig. 1 

Intractable ascites before Denver shunt® in case 1, case 2, case 3. These 3 CT images show intractable ascites before Denver shunt® in case 1 (A), case 2 (B), case 3 (C).

手術所見:右鎖骨下静脈-腹腔内にDSを留置した.

術後経過:数日のうちに腹水は激減し,体重も減少して症状の改善を認めた.DS後4か月目に急性リンパ性白血病(acute lymphoid leukemia;以下,ALLと略記)を発症,化学療法を行い,寛解と再燃を繰り返した.DS後7か月目にシャントの閉塞を来し,腹水が再貯留したがチャンバーを交換することによって改善した.DS施行から10か月後に両側多発肺転移を認め,1年後に死亡した(Fig. 2).

Fig. 2 

Clinical course after PPPD in case 1. PPPD: pylorus-preserving pancreato­duodenectomy, DS: Denver shunt®, ALL: acute lymphoid leukemia.

病理解剖所見:膵癌の局所再発,両肺,肝臓と右副腎に微小転移を認め,死因は膵癌による腫瘍死と診断した.

症例2:81歳,男性

既往歴:特記事項なし.

現病歴:浸潤性膵管内乳頭粘液性腺癌に対しPPPDを施行し,T3,N1,M0,Stage IIIであった.術後補助化学療法として1年間,ゲムシタビン単剤療法を行ったが,術後1年3か月頃より徐々に腎機能低下がみられた.腎機能を考慮し造影CTは撮影できなかったが,単純CTでは術後2年目に上腸間膜動脈周囲リンパ節の腫大を認めた.組織学的な再発の確認はできなかったが,S-1を50 mg/bodyに減量して投与した.術後2年10か月頃より腹水の貯留を認め,血清アルブミンは低値であった.当初は利尿剤やアルブミン製剤投与の効果はあったが,腎機能が徐々に低下し,腹水のコントロールが困難になっていった.術後4年9か月頃,腹水の著明な増加とともに腎機能が急激に悪化し血清クレアチニンが5 mg/dlを超えるようになったが,本人の希望により透析治療は行わず経過観察をした.

腹部膨満症状改善のため,PPPD術後5年1か月目にDSを施行した.

血液検査所見:ALB 2.6 g/dl,Cre 5.1 mg/dl,CA19-9 6.43 U/ml,CEA 4.7 U/ml

腹水細胞診:陰性(class II)

CT所見:上腸間膜動脈周囲リンパ節は径25 mmの腫大を認めるも経過中に大きさの変化はなかった.その他再発所見を認めず,腹水は大量に貯留していた(Fig. 1B).

手術所見:左鎖骨下静脈-腹腔内にDSを留置した.

術後経過:DS後1日目に血小板低下と凝固障害を認め,DICスコア9点となったためガベキサートメシル酸の投与を開始した.術後4日目には腹水が消失し,体重も減少した.その後DICは改善し,尿の流出も良好であり,血清クレアチニンも4 mg/dl程度まで低下した.しかし,尿路感染を契機に全身状態悪化し,DS後46日目に死亡した(Fig. 3).

Fig. 3 

Clinical course after PPPD in case 2. PPPD: pylorus-preserving pancreato­duodenectomy, DS: Denver shunt®, DIC: disseminated intravascular coagulation.

病理解剖所見:残膵周囲のリンパ節転移とリンパ管侵襲を基盤とした両肺の多発性微小転移を認めた.腎臓には萎縮,腎動脈硬化性腎症と腎盂腎炎の所見があった.また,B型C型肝炎ウイルス陰性であり,アルコール歴もなかったが肝臓は著明な萎縮と線維化がみられた.癌の顕微鏡的再発はあるものの死因は,腎盂腎炎,腎不全,肝萎縮による肝不全,悪液質が複合したものと診断された.

症例3:75歳,男性

主訴:腹部膨満

既往歴:肺線維症

現病歴:膵頭体部の膵癌にて紹介され,急性膵炎を併発していた.門脈全周狭窄によるborderline resectable膵癌であったためS-1単剤療法を4か月間行った.腫瘍は著明に縮小し,門脈合併切除を伴うPPPDを施行した.組織学的検索ではT1,N0,M0,Stage I,組織学的治療効果 Grade II(大星・下里分類)であった.術後1か月より腹水の増加を認め,術後2か月に穿刺排液を行うと乳糜腹水であった.この時の血清アルブミン値は2.7 g/dlであった.絶食のうえ中心静脈栄養管理とし,利尿剤やオクトレオチドの投与を行ったが効果はほとんどみられなかった.さらに,腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy;以下,CARTと略記)を合計7回施行したが,一時的な改善を認めるだけであった.

PPPD術後7か月目に,腹腔鏡下に乳糜腹水漏出部位の観察を行った.

血液検査所見:ALB 2.7 g/dl

腹水細胞診:陰性(class II)

CT所見:大量の腹水を認めた(Fig. 1C).

手術所見:カメラポート挿入時に約3 lの乳糜腹水を吸引した.腹腔内観察すると,腹膜播種は認めず,胆管空腸吻合部の背側を腹腔動脈方向から流れてくる乳糜が確認されたが外科的修復は困難と判断し,そのまま左鎖骨下静脈-腹腔内にDSを留置した(Fig. 4).

Fig. 4 

Denver shunt® in case 3. This 3D-CT image shows placement of Denver shunt® in case 3.

術後経過:DS後数日のうちに腹水の消失とともに体重は減少し,腹水による症状は改善した.DS後5か月目にカテーテル関連血流感染(catheter related blood stream infection;以下,CRBSIと略記)による一時的な敗血症,DIC様採血所見を呈したが抗生剤で軽快した.さらに,11か月目にも同様の症状を呈したためシャントチューブを抜去した.この時点で明らかな再発所見は認めなかったが,肺線維症が急性増悪しステロイドパルス療法を行うも呼吸不全のためDS後1年で死亡した.病理解剖は行われなかった(Fig. 5).

Fig. 5 

Clinical course after PPPD in case 3. PPPD: pylorus-preserving pancreato­duodenectomy, DS: Denver shunt®, DIC: disseminated intravascular coagulation, CART: cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy.

考察

内科的治療で消失しない,または再発を繰り返す腹水は難治性腹水と診断される1).多くは肝硬変症や癌性腹膜炎などに伴って発症し,著しくQOLの低下を来す症例である.これらに対する治療法の一つに腹腔-静脈シャント術がある.1974年にH. H. LeVeenがLeVeen型の腹腔静脈シャントの使用報告を発表し,世界的に広まった.しかし,当時はまだDICに対する治療法も確立されておらず,血栓症などの術後合併症が多く,治療法として長く定着するには至らなかった.その後カテーテルの閉塞対策である腹水ポンプが一体となったDenver型の腹腔-静脈シャントが市販され,広く使用されるようになった1)

シャント留置の基本推奨ルートはカテーテルの走行距離が短くなる右鎖骨下静脈-中心静脈ルートである.しかし,中心静脈への急峻湾曲によるカテーテルの屈曲が生じ,挿入困難となることがある.左鎖骨下静脈を選択することでそのリスクは回避できる.症例1において右鎖骨下静脈からのカテーテル挿入の際に,このような屈曲のために挿入に難渋した.そのため症例2,3のときには左鎖骨下静脈からのアプローチで行っている.次に,胸郭下縁の肋骨上に皮下ポケットを作成し,ポンピング可能な一方向弁のチャンバーを埋設固定し,一体化した腹腔側と静脈側カテーテルを皮下トンネルで上下方向へ誘導する.腹腔側カテーテルは肋骨弓下5~6 cm部まで誘導し,ガイドワイヤーと専用シースを用いて腹腔内に挿入する.一方,静脈側カテーテルは,胸部皮下を鎖骨下まで誘導し,ガイドワイヤーとシースを用いて中心静脈に留置する2).シャント留置後は,循環血漿量の急激な増加が起きるため,中心静脈圧モニターを指標に利尿剤を使用しながら尿量を確保することが重要である1).圧較差により腹水の自然流出が起こるが,シャント閉塞を防止するためにチャンバーのポンピングを行う必要がある.

医学中央雑誌で1977年から2014年までの期間でキーワードを「術後」,「腹腔静脈短絡術」,「難治性腹水」もしくは「乳糜腹水」として検索を行い,PubMedで1950年から2014年までの期間でキーワードを「postoperative」,「ascites」,「peritoneovenous shunt」として検索を行ったところ 16例の症例報告があった(Table 13)~16).自験例を含め,それらについて考察した.

Table 1  Reports of postoperative intractable ascites after oncological surgery treated with peritoneovenous shunt
No. Author Year Age/Sex Disease First operation Onset of ascites Character of ascites Cytodiagnosis of ascites Time of DS after first operation (month) Control of ascites DIC CRBSI Obstruction of shunt Survival time after DS
1 Savlov3) 1987 46/M Seminoma Retroperitoneal lymph node resection 6 POD Chylous ND 3 Succesful None None None 1 month, death
2 Imai4) 1992 34/M Leiomyosarcoma of stomach Total gastrectomy 6 POD Serous Negative 2 Succesful None Yes None 117 days, live
3 Kawahira5) 1994 58/F Gastric cancer Distal gastrectomy 1 month Serous Negative 2 Succesful None None Yes (Remove and relaparotomy, 6 month after DS) 30 months, live
4 Matsumoto6) 1995 44/F Gastric cancer Distal gastrectomy 1 POD Serous Negative 1.5 Succesful None Yes Yes (Remove and relaparotomy, 7 month after DS) 5 months, live
5 Oohashi7) 1995 65/F Pancreatic cancer Distal pancreatectomy 14 POD Chylous Negative 3 Succesful None None None 8 months, death
6 Maeda8) 1995 57/M Hepatocellular carcinoma Subsegmentectomy ND ND ND 3 Succesful ND ND ND 1 month, live
7 Yunoki9) 1998 62/F Gastric cancer Distal gastrectomy 3 POD Serous Negative 5 Succesful Yes None Yes 18 months, live
8 Kaas10) 2001 47/F Colon cancer Hemihepatectomy 2 POD Chylous ND 3 Succesful ND ND ND ND
9 Kaas10) 2001 32/M Testis cancer Retroperitoneal lymph node resection 1 POD Chylous ND ND Succesful ND ND ND ND
10 Kaas10) 2001 42/M Colon cancer Retroperitoneal lymph node resection 5 POD Chylous ND ND Succesful ND Yes Yes(Remove 1 month after DS) ND
11 Weiser11) 2003 2/M Wilms tumor Rt. Nephrectomy ND Chylous ND 0.5 Succesful ND ND ND ND
12 Takashima12) 2007 76/M Renal cancer Adrenalectomy+Retroperitoneal lymph node resection 7 POD Chylous Negative 8 Succesful None None None 4 months, live
13 Hosoki13) 2010 56/M Gastric cancer Total gastrectomy 1 POD Serous Negative 3 Succesful None None None 6 months, live
14 Watanabe14) 2010 59/M Hepatocellular carcinoma Partial hepatectomy 1 POD Serous ND 3 Succesful Yes None Yes 33 months, death
15 Kuwada15) 2011 74/F Gastric cancer Distal gastrectomy 3 POD Serous ND 3 Succesful Yes None None 24 months, live
16 Itou16) 2011 62/M Gastric cancer Total gastrectomy 1 POD Serous Negative 1 Succesful None None None 24 months, live
17 Our case 1 54/F Pancreatic cancer PPPD 26 months Serous Negative 35 Succesful None None Yes 12 months, death
18 Our case 2 81/M Pancreatic cancer PPPD 34 months Serous Negative 61 Succesful Yes None 46 days, death
19 Our case 3 75/M Pancreatic cancer PPPD+Portal vein resection 11 POD Chylous Negative 7 Succesful Yes Yes None 12 months, death

DS: Denver shunt®, DIC: disseminated intravascular coagulation, ND: no data, POD: postoperative day, PPPD: pylorus-preserving pancreatoduodenectomy

全症例でDS後に腹水コントロール良好となり,症状の改善が得られている.2年以上腹水の再貯留なく経過している症例も報告されている.

胃切除術後と肝細胞癌術後の難治性腹水症例ではいずれも肝炎や肝硬変,肝障害を伴った症例であった.これらの症例では腹水が術後比較的早期に発生していることや,その性状から肝リンパ漏によるものとされている.原因としては手術時のリンパ管損傷と,肝障害によるリンパ流の増加があり,損傷したリンパ管の治癒が妨げられたためであると考察されている4)6)

また,その他は乳糜腹水を来した症例であったが,いずれも発症は術後早期であり後腹膜臓器摘出やリンパ節郭清術後に伴うものであった.これらの症例では乳糜槽に注ぐ腹腔リンパ節や上腸間膜リンパ節のリンパ流が手術時に損傷されることによって起こるとされる7)17)

自験例の症例1,2では初回手術から2年が経過してから漿液性の難治性腹水を発症している.術後化学療法を行っていたことや,血清アルブミン値も低値であることから低栄養状態であったことは一因と考えられた.また,症例2では慢性腎不全の進行があり,尿量の確保が困難であったため水分バランス管理が困難であったことも腹水治療を難しくした原因の一つと考えられた.症例3では前述のように,乳糜槽に注ぐリンパ流が手術時に損傷されたことが原因と考えられる.

症例1から症例3のDSが施行された2005年10月から2012年10月までに,当科で膵癌に対して膵頭十二指腸切除術が施行された症例は172例であった.当科においては,内科的治療を6か月以上行っても治療効果がなく,著しくQOLが損なわれるような腹水であり,画像検査での腹膜播種や腹水細胞診で悪性所見がみられない場合にDS挿入の適応としている.最終的には患者さんの希望と主治医の判断で行うこととしている.

DSの合併症として重要なものにDICやCRBSI,シャント閉塞などがあった.

DICはDS後の早期合併症の一つであり,症例2のように術後3日以内に多く起こるとされる.術後早期にDICを起こした報告は3例あったが9)14)15),いずれも重篤な出血や血栓症などの併発は認めず,ガベキサートメシル酸やファモスタットメシル酸の投与などにより改善がみられている.腹水が大量に血液中に流入することにより凝固系が亢進し,DICがじゃっ起されると考えられている1).症例3では術後5か月,11か月でCRBSIとともにDICを発症しているが,その際の血液培養からEscherichia coliMorgnella morganiiが検出された.乳糜漏から低栄養状態が続き,bacterial translocationを起こしたためであったと推察される.

CRBSIを起こした症例は3例報告されている4)6)10).そのうち2例の報告4)10)ではCRBSIを契機にシャントを抜去している.今井ら4)の症例ではシャント抜去後に再開腹手術を行い,腹水と感染のコントロールが可能となっている.症例3ではCRBSIを2回起こし,2回目にはシャントを抜去したが,肺線維症の増悪も併発し全身状態改善せず死亡した.重篤なCRBSIであると判断できる場合には全身状態不良となる前に抜去を考慮したほうが良いと思われる.

シャントの閉塞を来した症例は5例報告されている5)6)9)10)14).2例9)14)ではシャントの交換により腹水コントロールは再び良好となっている.繰り返すシャント閉塞や5),シャント留置中の発熱や嘔気などの症状が問題となっていた症例では6)シャント抜去後に再開腹し,リンパ漏根治手術を行っている.症例1ではシャントのチャンバーを交換することで改善された.

また,悪性腫瘍術後の難治性腹水に対するDS留置に際して問題となるのは血行性転移の可能性である.これらの文献ではDS後の肺転移の出現など,血行性転移を示唆する報告はされていない.Tarinらは癌性腹水に対して腹腔-静脈シャントを施行した15例に対し病理解剖を行った結果,7例のみに血行性転移したと思われる微小な肺病変などを認めたが,いずれも臨床的に問題になるものではなかったと報告している18).症例1,2でも病理解剖の結果,血行性に播種したと考えられる微小な転移巣を認めたがいずれも臨床症状を呈する病巣ではなかった.

症例1,3では術後約1年のQOL改善が得られ,経過中に発症したALLに対する化学療法も施行することが可能であり非常に効果的であった.重篤な合併症を防ぐことができればQOLを長期間改善する可能性があるため,悪性腫瘍術後の難治性腹水に対しDSは治療の選択肢の一つとして考慮できる.膵癌は悪性度が高く腹膜播種,遠隔転移の頻度も高いことから慎重に症例を選ぶ必要がある.今後症例の蓄積を待って適応選択のさらなる検討が必要と考えられる.

なお,本論文の要旨は第114回日本外科学会定期学術集会(2014年4月,京都)において報告した.

利益相反:なし

文献
 

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