日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
膜型人工肺管理によって救命しえた肝部下大静脈欠損・奇静脈結合を合併した食道癌術後の乳糜胸に起因する重症呼吸不全の1例
白石 卓也富澤 直樹安東 立正小倉 崇以鈴木 裕之二宮 致
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2016 年 49 巻 5 号 p. 392-399

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抄録
 肝部下大静脈欠損・奇静脈結合を伴う食道癌術後乳糜胸から急性呼吸促迫症候群を併発し,膜型人工肺管理下に乳糜胸に対する手術を行い救命しえた症例を経験した.患者は61歳の男性で,胸部中部食道癌手術目的に紹介され,CTで肝部下大静脈欠損・奇静脈結合を認めた.開胸手術を行い,胸管を通常の位置に認め結紮切離した.術後乳糜胸による脱水から急性腎不全となり,急性呼吸促迫症候群も併発し循環呼吸状態は逼迫したため,術後第5病日に救命のため再手術を行った.呼吸状態不良のため膜型人工肺を導入し,胸腔鏡補助下胸管結紮術を施行した.膜型人工肺施行時は血管変異のため右房より脱血し低位下大静脈より送血した.術後胸水量は著減し,再手術後第4病日に膜型人工肺を離脱した.手術でしか救命できない可逆的肺障害の患者に膜型人工肺管理下で肺障害の原因を除く手術を行うことは,従来耐術不能と判断されていた患者の救命に有用な手段である.
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