日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
中央区域温存膵切除術の4例
東原 琢吉富 秀幸清水 宏明大塚 将之加藤 厚古川 勝規宮崎 勝
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2016 年 49 巻 5 号 p. 439-446

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抄録

 膵全摘術は膵内多発病変に対して有効な術式だが,術後膵内外分泌機能不全によるQOL低下は不可避であり,可能なかぎり残膵を多く温存することが望ましい.当院において2007年から2013年にかけて膵内多発病変に対し中央区域温存膵切除術を施行した4症例について報告する.症例1は十二指腸乳頭部癌および分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記),症例2は多発する腎癌膵転移,症例3は膵管内乳頭粘液性腺癌(intraductal papillary mucinous carcinoma;IPMC)および膵管癌,症例4は多発IPMNであった.切除後残膵長は平均5.2 cmであり,術後膵液瘻は2例に認めた.2例で術後糖尿病を認め,その内1例でインスリン導入を要した.術後全例で下痢や体重減少といった膵外分泌機能障害を疑う症状は認めなかった.症例2は4年後に再発を認め膵全摘術を要した.症例3は6か月後に再発を認めた.膵全摘術と比べ,中央区域温存膵切除術は残膵機能を維持することが可能であり,術後患者のQOL改善につながりうる有用な術式と考えられた.

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