日本消化器外科学会雑誌
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原著
腹腔鏡下胆囊摘出術後に診断された偶発胆囊癌症例の検討
大橋 浩一郎岡田 敏弘麻野 泰包末岡 英明裵 正寛宇山 直樹平野 公通藤元 治朗
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2016 年 49 巻 9 号 p. 827-833

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抄録

 目的:術前診断が胆囊良性疾患である症例に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行後,偶発的に胆囊癌と診断された症例(incidental gallbladder carcinoma;以下,IGCと略記)について検討した.方法:腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した1,034例中,術前疑診例を除いたIGC症例は11例(1.1%)であり,これらの臨床病理学的検討を行った.結果:全例が結石を保有し,うち7例が急性胆囊炎を併発していた.肉眼形態は表面型4例(36.4%),結節型1例(9.1%),平坦型6例(54.5%)であった.深達度は,m癌2例(18.2%),mp癌2例(18.2%),ss癌5例(45.4%),se癌2例(18.2%)でありpT2以上が63.6%であった.pT1症例はいずれも無再発生存中である.pT2以上の7例では全例追加切除が行われ,1例は追加切除組織内に癌を認めず無再発生存中であるが,残る6例はいずれも癌を認めた.そのうち1例は無再発生存中,1例は担癌生存中,4例は原病死した.結語:IGCにおける早期癌は予後良好であったが,進行癌では追加切除を行ったが予後不良であった.IGCは胆石性胆囊炎併存例に多くほとんどが非隆起性病変であり,これらが術前診断を困難にしている要因と考えられた.急性胆囊炎併存下では,胆囊評価が不十分になることが多く積極的な追加検査が必要と考えられた.

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