日本消化器外科学会雑誌
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編集後記
編集後記
宇山 一朗
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2017 年 50 巻 5 号 p. en5-

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桜の花も散り,若葉の季節となりました.今月号に掲載されている10編(原著論文1編,症例報告9編)の論文いずれも興味深い内容ですので,ぜひお読みいただきたい.

さて,4月末に開催された第117回日本外科学会定期学術集会のメインテーマは医療安全の問題をより重視する立場から「医療安全そして考える外科学」でした.この学術集会の特別企画の一つである「医療リスク 上部消化管外科」というセッションで発表の機会をいただいたので,この発表を契機に医療リスクについて,小生なりに考えたことを述べさせていただきます.昨今の医療事故を契機に特定機能病院では高難度新規医療技術評価委員会の設置が認定条件として定められました.しかし,評価する人物がその申請された高難度新規医療技術に詳しいとはかぎらず,リスク回避にそれ程,役立つとは思えません.小生は,2008年12月に当時,薬事法未承認の内視鏡手術支援ロボットを個人輸入で購入し,2009年1月よりロボット支援手術を開始しました.今でいうところの高難度新規医療技術に当てはまる技術と思われます.ロボット支援胃癌手術の初例を安全に行うために,韓国の延世大学まで複数回手術見学に行き,この領域の世界的権威であるWoo Jin Hyung先生の未編集ビデオをいただき,何回も何回も拝見し,手術のシミュレーションを繰り返しました.そして,初例にはHyung先生を指導者として招聘し,安全な導入に最善の努力をしたつもりです.医療リスクの本質は,評価委員会などの監視制度ではなく,医師の誠実性に依存していると確信しております.恩師である慶應義塾大学医学部外科学教室名誉教授であられる北島政樹先生はつねづね,外科医に必要なことは,skill(技術),science(科学),そして最も重要なことはhumanity(人間性)であるとおっしゃっておりました.医療リスクに必要なことも同様であり,医師の性善説に成り立つものであると考えるこの頃です.

最後に,本誌は邦文誌の最高峰の医学誌です.会員諸兄の性善説に基づいた素晴らしい投稿をお待ちしております.

 

(宇山 一朗)

2017年5月1日

 

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