2017 年 50 巻 8 号 p. 664-672
患者は68歳の男性で,近医で肝門部腫瘍の診断で当科へ紹介され,肝門部領域胆管癌の診断で根治手術の適応と判断した.術前のindocyanine green(以下,ICGと略記)負荷試験でICG15分血中停滞率が100%以上と著明な高値が認められたが,Child-Pugh分類や99m-Tc-galactosyl-human serum albumin(以下,GSAと略記)肝シンチグラフィーでは異常所見は認められず,背景疾患を有さないことから体質性ICG排泄異常症と診断し手術の方針とした.手術は右肝切除術,尾状葉合併切除術,肝外胆管切除術および門脈合併切除術を施行した.術後は危惧された肝不全の発症を認めなかった.本症を伴った肝切除術を要する患者については,一般肝機能検査やGSA肝シンチグラフィーといったICG試験以外の肝機能検査結果を踏まえ総合的に手術適応や術式を検討すべきと考えられた.