2018 年 51 巻 7 号 p. 471-478
症例は50歳の女性で,右頸部に膨隆を自覚し,一過性の頸部閉塞感や通過障害も認めていた.前医を受診し,頸部超音波検査にて甲状腺腫瘤を疑われ当科紹介となった.CTでは甲状腺右葉背側に内部に微細な空気を伴う囊胞性腫瘤を認め,食道粘膜との連続性が疑われた.食道造影検査にて頸部食道右側に突出した憩室を認めたことからKillian-Jamieson憩室(以下,K-J憩室と略記)と診断し,有症状であったため憩室切除術を施行した.術中経鼻胃管より送気すると憩室はより大きく膨隆し,容易に把握することが可能となった.憩室はKillian-Jamieson spaceから発生していることが確認でき,基部にて憩室を切除した.消化管憩室の中でもまれではあるが,嚥下障害などの症状を伴う甲状腺腫瘍を疑われた際には,K-J憩室の存在も念頭に置く必要がある.