2019 年 52 巻 2 号 p. 112-118
子宮脱用ペッサリーは,子宮脱に対する比較的簡便な非観血的治療法であるが,機械的圧迫からおこる直腸膣瘻は修復しても再発率が高く,治療に難渋する合併症の一つである.症例は75歳の女性で,5年前に子宮脱に対してペッサリーを留置した.3か月毎に行われていた定期検診時の内診および直腸診で直腸膣瘻と診断された.膣内の裂創は4 cm,瘻孔が3 cmと大きく,高齢で直腸膣中隔壁の菲薄化も認められたため一期的手術は困難であると考え,人工肛門造設術後に,二期的に子宮摘出術,直腸切除術,および直腸膣中隔部に大網充填術を施行した.術後合併症なく,術後13日目に退院した.大きさ3 cmの大きな直腸膣瘻で,修復組織としての直腸膣中隔も加齢から菲薄化した治療困難と思われた症例に対しての修復に有茎大網充填が有用であったと考えられた.