2019 年 52 巻 3 号 p. 146-156
症例は61歳の女性で,内視鏡検査および生検にて,表在性下咽頭浸潤を伴う食道癌肉腫と診断した.造影CTでは転移の所見なく,CePh,cT1b(SM3)N0M0 Stage Iと診断,喉摘の可能性も説明したうえで手術の方針とした.全身麻酔下に彎曲型喉頭鏡を用いて腫瘍口側にマーキングを行い,手術は喉頭を回転し術野を展開しながらマーキング口側まで下咽頭を全周性に剥離し離断した.術中迅速病理診断で陰性を確認し,遊離空腸で再建し,喉頭温存手術を完了した.最終診断は食道癌肉腫CePh,fT1b(SM3)N0M0 Stage I.断端は陰性であった.術後声帯麻痺なく,1年間無再発で経過している.本邦9例の頸部食道癌肉腫の報告中,手術症例は8例であった.本症例は,下咽頭浸潤陽性例での初の喉頭温存の報告である.腫瘍口側端の正確な評価による根治性の担保および,喉頭回転による術野の確保が喉頭温存に重要と考えられた.