2020 年 53 巻 1 号 p. nm1-nm4
毎年恒例としております会誌編集委員会からの年頭のご挨拶と本誌の現況を報告させていただきます.2019年9月より編集委員長が遠藤格先生より比企直樹となり,初めての現況報告です.Web環境も整備され,ストレスなく熱い議論に集中できるようになりました.
昨年,10人の先生方が任期満了となり,退任されました.掛地吉弘先生,福島亮治先生,安田卓司先生(上部),浅尾高行先生,長谷川博俊先生,村田幸平先生,山口茂樹先生,(下部),上坂克彦先生,新地洋之先生,永野浩昭先生(肝胆膵),6年間という長い任期の間,熱心にご指導と編集委員会への出席,ありがとうございました.
そして,新しく,秋吉高志先生,上野秀樹先生,江口晋先生,窪田健先生,黒川幸典先生,小林宏寿先生,斎浦明夫先生,塩崎敦先生,山下継史先生,山本聖一郎先生に新委員として加わっていただきました.また,編集幹事も秋山浩利先生,大田貢由先生から細田桂,新原正大に代わりました(表1).今後も末永くよろしくお願いしたいと思います.
担当理事 | 遠藤 格 | |||
委員長 | 比企 直樹 | |||
委員 | 秋吉 高志 | 市川 大輔 | 上野 秀樹 | 江口 晋 |
遠藤 格 | 大塚 将之 | 絹笠 祐介 | 窪田 健 | |
黒川 幸典 | 黒柳 洋弥 | 小林 宏寿 | 斎浦 明夫 | |
塩崎 敦 | 大幸 宏幸 | 瀧口 修司 | 竹内 裕也 | |
竹政伊知朗 | 能城 浩和 | 廣野 誠子 | 藤井 努 | |
堀口 明彦 | 丸橋 繁 | 水島 恒和 | 本山 悟 | |
山下 継史 | 山本聖一郎 | |||
九嶋 亮治(病理学) | 伴 慎一(病理学) | |||
全 陽(病理学) | 森田 智視(統計学) | |||
English language editor | 小島多香子 | |||
編集幹事 | 新原 正大 | 細田 桂 |
本誌の採用論文数の年次推移を,表2に示します.投稿論文数は10年間で緩やかに減少しております.2019年(52巻)の掲載論文数は合計で88編であり,一昨年の2018年(51巻)の100編より減少してしまいました(表3).
年度(5月から翌年4月まで) | 論文投稿数 | 採用率 | 不採用率 |
---|---|---|---|
2009年度 | 485 | 35.9% | 42.9% |
2010年度 | 443 | 29.8% | 47.6% |
2011年度 | 353 | 23.2% | 54.1% |
2012年度 | 319 | 23.5% | 52.4% |
2013年度 | 275 | 17.8% | 42.6% |
2014年度 | 240 | 18.3% | 24.6% |
2015年度 | 223 | 27.8% | 32.3% |
2016年度 | 251 | 20.3% | 27.9% |
2017年度 | 183 | 36.6% | 49.2% |
2018年度 | 176 | 39.2% | 44.3% |
※採用,不採用以外は,査読中となっているものです.
年 | 原著 | 総説 | 症例報告 | 臨床経験 | 研究速報 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2009年(42巻) | 22 | 0 | 176 | 5 | 1 | 204 |
2010年(43巻) | 17 | 2 | 175 | 9 | 0 | 203 |
2011年(44巻) | 23 | 0 | 191 | 13 | 0 | 227 |
2012年(45巻) | 7 | 0 | 150 | 3 | 0 | 160 |
2013年(46巻) | 7 | 0 | 110 | 6 | 1 | 124 |
2014年(47巻) | 10 | 0 | 98 | 0 | 0 | 108 |
2015年(48巻) | 10 | 0 | 120 | 4 | 0 | 134 |
2016年(49巻) | 18 | 0 | 138 | 3 | 0 | 159 |
2017年(50巻) | 10 | 1 | 112 | 1 | 0 | 124 |
2018年(51巻) | 5 | 0 | 92 | 3 | 0 | 100 |
2019年(52巻) | 9 | 0 | 76 | 3 | 0 | 88 |
※一般投稿論文の掲載数.Editorial,Letter to the editor,特別寄稿,特別報告などは除く.
本誌の全文PDF+HTMLへのアクセス数は2018年で579,940件(前年:451,359件)であり,前年に比べ28%増と,初めて50万件を超えております.また,2018年1月には初めて6万を超えました.モバイル端末で閲覧されている可能性もあり,配信されたメールマガジンからJ-STAGEへ飛ぶという閲覧方法が増えているのかもしれません.
本誌は1969年に村上忠重先生を初代委員長として創刊されました(表4).編集委員長の任期は第2代の鍋谷欣市先生の14年間が最長となりますが,近年では3~5年のことが多く,第6代の桑野博行先生,第7代の遠藤格先生は6年間務められました.以前は印刷した原稿を風呂敷包みで編集委員会に持参されていたと伺っております.2010年には事務局が茅場町から新富町へ,2017年に新富町より三田に移転し,オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化し,サイトからPDFをダウンロードして査読するスタイルに移行し,現在のWeb会議のスタイルになりました.2019年には優秀論文賞の新設,Similarity Checkを導入,Web会議システムの刷新を行いました.本誌の歴史を作られてきた先輩諸兄に心から感謝の意を表したいと思います.
1968年 | 日本消化器外科学会発足. |
1969年 | 初代委員長 村上 忠重,日本消化器外科学会雑誌第1巻第1号発行. |
1970年 | 事務所移転(横浜市立大学第二外科→東京女子医科大学消化器病センター) |
1976年 | 日本医学会加盟. |
1979年 | 担当理事 長尾 房大,第二代委員長 鍋谷 欣市 |
1982年 | 事務所移転(九段南) |
1987年 | 担当理事 杉浦 光雄 |
1988年 | 担当理事 岩崎 洋治 |
1989年 | 英文要旨を追加. |
1991年 | 担当理事 大原 毅 |
1993年 | 担当理事 鈴木 博孝,第三代委員長 大原 毅,誓約書を追加. |
1995年 | 論文種目「臨床経験」を追加. |
1997年 | 表紙をデザイン化,編集後記の掲載を開始. |
1998年 | 担当理事 嶋田 紘,第四代委員長 佐治 重豊,著者名を10名以内に限定,入会免除依頼の受け付けを開始(病理医などの他科を想定). |
2000年 | 論文種目「総説」を追加,査読希望領域欄を追加,学会公式サイトを公開. |
2001年 | 第五代委員長 上西 紀夫,査読体制変更(臓器別),Digestive Surgeryを公式英文誌化. |
2002年 | データ添付投稿の受け付けを開始(FD,MO,CD). |
2004年 | 学会独自のオンライン・ジャーナルサイトを公開. |
2006年 | 事務所移転(茅場町),理事長制導入. |
2007年 | 担当理事 安藤 暢敏,第六代委員長 桑野 博行,文献検索期間の明示を義務化,平成19年度電子アーカイブ対象誌に選定(Journal@rchive),会誌編集委員会からの公示を掲載開始. |
2010年 | 事務所移転(新富),オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化. |
2011年 | J-STAGEへ移行,会誌完全電子化,メールマガジン配信開始,CrossRef利用開始(DOI付加),委員会の体制を強化(統計学の委員,English language editor). |
2012年 | 担当理事 渡邊 昌彦,Top publications in Japanese和文ジャーナル上位100誌にて8位(Google Scholar Metricsより),J-STAGE 3公開,全文HTML公開,論文種目「特別報告」を追加,「日本消化器外科学会雑誌 英文作成上の注意(監修:東京医科大学国際医学情報学講座)」「日本消化器外科学会雑誌 用字用語について(公用文作成の要領などを基に作成)」を公開,投稿時の動画資料への対応を開始. |
2013年 | 第七代委員長 遠藤 格,委員を増員,学術情報XML推進協議会に加盟,DOIの付番ルール変更(早期公開機能への対応),和文の索引用語を追加,動画資料を含む記事を掲載,特別報告(NCD Annual report)・特別寄稿(英語による教育コンテンツ)を掲載,抄録・引用文献データベース「Scopus」の収載状態を整理. |
2014年 | NLMのElectronic linkを修正,Web会議システムを導入,J-STAGEの改善によりGoogle Scholarとの連携を強化. |
2015年 | 特別報告(医療安全委員会)を掲載,J-STAGE利用者アンケートに協力,投稿規程を改正(著者数制限の変更,貢献度の申告,連絡責任者及び保証者の明示,用字用語についての変更(日本医学会 医学用語辞典に準拠),図表枚数制限の緩和,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止))の導入. |
2016年 | 投稿規程を改正(ギフトオーサーの追加の抑止,倫理審査番号の原則明示,英文要旨と英文の索引用語情報は採用後の提示に,チェックリスト・原稿テンプレートを開示),メールマガジンへの会告・広告掲載開始,メールマガジンのデザインを更改(モバイルファースト) |
2017年 | 事務所移転(三田),J-STAGEにてGraphical Abstractを表示開始,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC(表示-非営利))へ変更,J-STAGE刷新. |
2018年 | 学会創立50周年,J-STAGE利用者アンケートに協力,J-STAGEの論文閲覧性向上によるアクセス数の大幅増加を記録. |
2019年 | 担当理事 遠藤 格,第八代委員長 比企 直樹,優秀論文賞の新設,Similarity Checkを導入,Web会議システムを刷新,J-STAGE編集委員会名簿を公開. |
研究倫理問題に関しては毎年掲載しておりますが,注意喚起という目的で再掲させていただきます.まずJDDWの倫理指針が改訂されました.人を対象とする臨床研究では,自施設のIRB(Institutional Review Board)を通過し,前向き臨床試験では公的機関(UMIN臨床試験登録システム,日本医師会治験促進センター「臨床試験登録システム」,日本医薬情報センターなど)に登録することが求められます.侵襲(軽微な侵襲を除く)・介入を伴う研究について,研究責任者に対し,モニタリングや第三者的な立場の者による監査の実施が新たに義務付けされます.9例以下をまとめた研究性のない症例報告は倫理審査が不要なようです.10例以上をまとめた症例報告は症例集積研究とみなされ,倫理審査委員会の審査が必要です.
最近問題となることの多い多重投稿については,Similarity Checkを導入することで,スクリーニングをする方針となりました.また,多重投稿についてはぜひ,「出版倫理」のページを参考にしていただきたいと思います.
http://www.ronbun.jp/ethic/index.html
以下,2020年の所信表明を述べさせていただきたいと思います.
「忘れえぬ論文」を著者と作り上げるチーム作り
本誌の基本編集方針である「和文誌の最高峰を維持する」と「若手消化器外科医の登竜門」は今後も守り続けていく所存であります.一方,「日本消化器外科学会雑誌は投稿するにも敷居が高い」,「厳しすぎる査読に閉口した」などの声を耳にしますし,「もっと査読の緩い雑誌への投稿を考える」と言われるとガッカリすることもあります.昨年までは裁定時のリジェクトの理由として「新奇性の欠如」という項目がありましたが,本誌にどこまで新奇性が必要なのかという意見が沸き上がりました.読者がその論文を読んだときに,自身の臨床活動に有意義だったり,教育意義が高かったりすることが重要ではないかと考えました.その論文が世界初,日本初の症例報告でなかったとしても,読者の診療にフィードバックが可能であり,教育的意義が高いものであれば,査読委員にその方向へ論文指導を行っていただき,アクセプトに導く査読ができるのではないかと考えています.前委員長の遠藤格先生も「日本消化器外科学会 会誌編集委員会『2017年,年頭にあたって』」において,臨床医学では「稀少性」以外にも,「新しい解釈」や「警鐘を鳴らす一例」も会員に裨益するところ大であると述べられております.実際に採択率も2013年度の17.8%を底に,2018年度では39.2%と上昇しており,今年度は更なる採択率上昇が望まれます.採択率の高く,いい論文を生む日本消化器外科学会雑誌のイメージとなることと思います.
その方針の下,査読委員の先生方には,「厳しすぎる査読」ではなく,最後まで付き合う「愛情深い査読」をしていただいていると思います.私自身の経験で申し訳ありませんが,自分の書いた論文でも「腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除:LECSに関する論文」(日本消化器外科学会雑誌)も何度も査読者からコメントをいただき,リバイスを繰り返しました.その過程は大変ではありましたが,とても想い出深い,「忘れえぬ論文」となっております.そして,その論文を契機に自分自身の推敲力が向上したようにも思います.日本消化器外科学会雑誌では,どうやったらいい論文となるのかを常に考えて,査読業務を行っていただいており,「忘れえぬ論文」を著者と作り上げるチームでありたいと考えております.
投稿数減少に対する対策案
前述のように,投稿数は年々漸減しており,雑誌の改革が望まれます.編集委員会では,Web会議ではなく,対面会議を年一回慣行しており,そこで編集委員から多くのアイデアを出していただきました.そこでは「投稿から採用まで,採用から掲載までスピードアップを図る」,「編集委員の本学会雑誌に掲載された思い出の1編を紹介する」,「一部の症例報告の体裁を変えて,写真やビデオを多くし文字を少なめにすることで書きやすく読みやすいものに変更する」,「私の工夫(手術手技)など読者の興味を引くものを特集として掲載する」,「投稿に対してインセンティブを考慮する」などの意見があげられました.
以上,2020年の日本消化器外科学会会誌編集委員会の基本姿勢,改革案などについて記しました.本誌の歴史と伝統を重んじつつ,新たなる雑誌への改革も考えつつ,「和文誌の最高峰」として,いつまでも輝く雑誌であるように委員一同精励してまいります.
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 比企直樹)
(2020年1月)