日本消化器外科学会雑誌
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編集後記
編集後記
山本 聖一郎
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2020 年 53 巻 12 号 p. en12-

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私が編集委員となったのは2019年からで,毎月2–4編の論文の査読を担当しております.毎月,担当する論文の連絡がきて,2–3週間のうちに精読し,査読意見を完成させる必要があります.多くの編集委員は同様のお考えで査読なされていると思いますが,初回の査読では,その論文の内容,体裁,学術論文としての表現などを確認し,不採用と判断しても教育的見地からコメントを記載しております.しかし,ときにどうしてこの段階で投稿してしまったのか首をひねりたくなる論文に遭遇することもあります.指導的立場にある先生は,ぜひ投稿前に十分に筆頭著者と内容を検討していただき,推敲を重ねたうえで論文を投稿していただきたいと思います.投稿に至る時間を要することにはなりますが,十分に推敲された論文のほうが採択される可能性が高いことは申すまでもありません.

2020年の掲載論文の内訳は2021年の第1号に記載されると思いますが,本誌とともに多くの日本語雑誌で共通する傾向にあるのが原著論文の減少と症例報告の増加です.背景には原著論文を英語論文として発表し,国内外に広く知見を公表する流れが定着してきていることが考えられます.また,一般には,業績としては日本語論文より英語論文のほうが高く評価されることも一因でしょう.しかし,多くの若手消化器外科医にとって,いきなり質の高い英語論文を執筆することはハードルが高く,まずは日本語で数編の原著,症例報告を経験してから英語論文の作成に進むほうが,手術同様,若手外科医にとって無理なく成長できるのではないかと個人的には考えております.

さて,第53巻12号の掲載論文は,原著論文1編,症例報告7編,「オペレコを極める」の原稿2編で,いずれも著者と何回かのやりとりののち採用になった興味深い内容の論文ばかりです.その中で敢えて今月の一押し論文として,村瀬佑介先生の「Pagetoid spreadを伴う肛門管癌に対し3科合同hybrid手術を行い肛門温存可能となった1例」を選ばせていただきました.従来ならば肛門非温存術か,温存するにも経肛門切除で対応せざるをえなく,視野展開や切除範囲の確認,肛門機能への影響が問題でありましたが,直腸内進展部を内視鏡的粘膜下層剥離術であらかじめ切開しておくことで,経肛門操作の終着点の判断が容易になり,必要かつ十分な切除が可能になると考えられます.ぜひ,ご一読いただければと存じます.2021年にはCOVID-19問題も収束し,ぜひ皆様と学会場でお目にかかることができればと思います.

 

(山本聖一郎)

2020年12月1日

 

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