日本消化器外科学会雑誌
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原著
消化器外科手術における精神疾患併存患者の特徴と問題点
武居 友子亀山 哲章矢作 雅史猪股 研太秋山 芳伸
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2021 年 54 巻 6 号 p. 367-374

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抄録

目的:消化器外科手術における,精神疾患併存患者の臨床的特徴および問題点を明らかにすることを目的とした.方法:2013年から2019年に当院で消化器外科領域の手術を施行された患者のうち,精神科閉鎖病棟への入院を要した症例を対象として,周術期データを収集し検討した.結果:対象症例は95例であった.精神疾患は統合失調症が66例,認知症が12例,長期入院症例が65%であった.消化器外科疾患は,良性疾患が59例,悪性腫瘍は36例であった.悪性腫瘍は,進行癌が30例(85.7%)であり,検診発見は1例であった.術前血清アルブミン値の平均は3.5 g/dl,肥満は14例(14.8%),痩身は32例(33.7%)と,高率に栄養障害を認めた.術後合併症は18例(18.9%)に認められ,麻痺性イレウス,尿路感染症,誤嚥性肺炎が多く,術後の身体拘束との関連が疑われた.また,本人の意思決定能力が不十分であり,家族がいない症例が13例(13.7%)であり,これらは主治医の判断により手術が施行されていた.結語:精神疾患併存患者の特徴は,低栄養,活動性低下,嚥下障害,腸管蠕動の低下であった.また,社会的問題として,精神科患者におけるがん検診の低受診率,意思決定能力の欠如があり,多職種の連携によるサポートが必要と考えられた.

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