日本消化器外科学会雑誌
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中山恒明記念館の開館について
山本 雅一
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2022 年 55 巻 12 号 p. nm2_1-nm2_2

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中山恒明先生は昭和の時代を駆け抜けた世紀の外科医です.食道がん,胃がん外科治療にとどまらず,幅広い外科分野において数多くの画期的な業績を残されました.このたび,縁あって宇都宮に中山恒明記念館を開館する運びとなりました.中山先生のご紹介と記念館設立に至る経緯について簡単に述べたいと思います.

中山先生は1910(明治43)年東京神田の生まれです.1930(昭和5)年千葉医科大学に進学・卒業後,千葉医科大学第二外科に入局し,1941(昭和16)年助教授に就任します.戦中戦後の物資の少ない時代に必死で外科手術の改良に努め,局所解剖の熟知から短時間で出血が少ない胃切除術を確立しました.1946(昭和21)年,独創的な考えで食道切除後空腸吊り上げによる食道空腸吻合に成功します.1947(昭和22)年36歳の若さで千葉医科大学第二外科教授に昇格.食道がんに対する新しい3期分割手術に取り組み,切除成績を大きく向上させました.1952(昭和27)年頃開発した中山式胃腸縫合器は,胃腸をステープラで縫合する器械で,後に世界でベストセラーとなりました.1953(昭和28)年ニューヨーク国際外科学会にて「がんの根治手術」のタイトルで特別講演に招聘されました.その後,国際外科学会創設者のマックス・トーレック博士に出会い海外での活躍の場が広がります.「fastest surgeon in the world」と呼ばれ,中山先生の名声は瞬く間に全世界に広がり,米国,欧州,南米,豪州から招待を受け,数々の賞を受賞されました.日本では日本癌治療学会,食道疾患研究会(現日本食道学会),日本消化器外科学会や国際食道疾患会議(ISDE)など多くの学会,研究会の設立に携わりました.また,がんの早期発見早期治療を力説し,財団法人中山がん研究所,会員制の健診システムである中山メディカルクラブを設立しました.1965(昭和40)年に東京女子医科大学の客員教授に就任し,消化器病センターを設立します.センター制度の下に内科・外科の垣根を取り払い,後の初期・後期研修医制度の先駆けとなる医療練士制度を立ち上げました.現在まで500名を超える医療練士が称号を受け全国で活躍しています.気さくでオープンな性格のため日本のみならず海外の多くの外科医から慕われ,数多くの中山語録を残されました.“人生は経験である”は有名なことばです.1982(昭和57)年に勲一等瑞宝章を授与され,2005(平成17)年94歳にて老衰で生涯を閉じました.

中山先生と社会医療法人中山会宇都宮記念病院との関係について説明します.当院は1963(昭和38)年に石﨑省吾先生を初代院長として開設されました.石﨑院長は千葉大学第二外科出身であり,開設時に千葉大学教授であった中山先生より強力な支援をいただきました.このような経緯から,当法人は中山会を名乗り,当会の理念を“すべては患者様のために”という中山語録のひとつとしました.公益財団法人 中山がん研究所が2021(令和3)年4月に閉鎖されたことから,中山先生の資料をどこで保管・管理するのかが問題となりました.中山会城守俊章会長が資料を快く引き受け,資料を展示する記念館設立も提案され,2022(令和4)年10月に記念館を開館する運びとなりました.

記念館のコンセプトは中山先生の不朽の功績の顕彰と継承です.狭い館内ですが,7つのコーナーに分かれ,年表,功績,人柄,中山恒明賞,各種表彰状,著書などが展示され,貴重な手術ビデオなどが供覧できます.外科医のみならず一般の方々にも楽しんでいただける内容となっており,多くの医師,これから外科を目指す医学生,小中高校生,一般市民にも見学していただきたいと思っております.記念館へのお越しを心待ちにしております.

連絡先:社会医療法人中山会宇都宮記念病院(代表);028-622-1991

メールアドレス;kinenkan@nakayamakai.com

住所:栃木県宇都宮市大通り1-4-22 MSC第2ビル1階

開館時間:平日10:00–16:00 入館料:無料

メール,電話にてご連絡のうえお越しください.

 

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