2022 年 55 巻 3 号 p. 225-231
症例は61歳の女性で,元来食後に下腹部痛と下痢を認めることが多かったが,来院3週間前より腹痛は毎日となり,さらに血便を認めたため受診となった.下部消化管内視鏡検査で横行結腸に中心部に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認め,生検の結果は紡錘細胞肉腫であった.横行結腸肉腫の術前診断のもと,腹腔鏡下横行結腸部分切除術を施行した.横行結腸中央やや左側に漿膜露出が疑われる可動性良好な腫瘤を認め,大腸癌に準じた切除縁の確保とD3郭清を行った.術後の病理組織学的検査において,横行結腸類上皮平滑筋肉腫の診断となった.術後24か月で肝転移を認めたが切除可能であった.以後現在まで再再発なく生存中である.本症例は平滑筋肉腫の1亜型である極めてまれな悪性腫瘍であり,今後も慎重な経過観察が必要であると考えている.