日本消化器外科学会雑誌
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編集後記
編集後記
日髙 匡章
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2024 年 57 巻 9 号 p. en9-

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2023年より歴史ある日本消化器外科学会雑誌の編集委員を拝命し約1年が経過したところです.毎月,会誌編集委員会がウエブで開催され,比企委員長の元,多くの症例報告や研究論文について熱い議論が交わされております.分野の違う論文や画像診断や治療方針についてさまざまな意見が飛び交い,私自身の経験値アップにつながっております.

さて57巻9号では7編の症例報告が掲載されております.私の一押し論文は,「食道癌術後の遠位胆管癌に対して胃管温存の膵頭十二指腸切除術を施行した1 例」です.食道癌術後,異時性に膵頭部腫瘍を認め膵頭十二指腸切除術が必要となった場合,右胃大網動静脈の血流温存が焦点になります.この症例報告は1 mmスライスCTで詳細に血管と腫瘍の位置関係を把握し,動脈静脈再建も考慮に入れながら,安全に温存可能であった症例です.術前シミュレーションの大事さを強調した論文となっており,若い先生方に有益な情報を含んだ論文だと思いますので,ぜひご一読ください.

「査読への想い:如何に教育的な査読によりいい論文を作り出すか?」

邦文論文は,医師にとって最初に作成する機会が多い論文です.若い先生が将来,研究論文を作る前の登竜門だと思っています.日常診療で困ったとき,英文にはない解釈や方法について,これまでの先人たちの知恵や経験が詰まったものが邦文論文だと思います.

まずは論文という「形」にすること,これが外科医にとって苦手な分野でもあります.困った症例を「形」に残すことは後世の先生達にとって役に立つことです.若い先生方には,ぜひ症例報告を積極的に作成し,本学会雑誌へ投稿をしていただきたいと思います.会誌編集委員会では単に珍しい症例というだけでなく,読者にとってより良い情報が届けられるよう多くの委員から質の高い論文へ育てるような提案をしていただいております.

ぜひ,多くの若い先生方からの投稿をお待ちしております.

 

(日髙 匡章)

2024年9月18日

 

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