日本消化器外科学会雑誌
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急性胃粘膜障害に対する迷切の効果について, 実験的研究
清藤 敬高田 征尚緒方 卓郎
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1977 年 10 巻 2 号 p. 167-171

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抄録

上部消化管出血は種々な原因により起こるが, 薬剤やストレスによっておこる胃十二指腸の糜爛や多発性急性潰瘍からの出血が少なくない.一般状態不良な患者にこのような合併症がおこると, 治療は益々困難となり早急に有効な処置をとる必要がある.とくに長期にステロイド投与を受けていた場合は, 外科的治療をおこなうことが容易でなく, 縫合不全の危険も大きい.両側幹迷切とドレナージ手術は手術侵襲が小さく, 縫合不全の危険性も少ないのでこのような場合の外科的治療として適していると考えられる.
本実験では急性胃粘膜障害として, ラットにコーチゾン, アスピリン, インドメサシンを連続投与し, 胃を切開してガーゼによる擦過により粘膜表面の糜爛を形成した.さらにこれに両側幹迷切とドレナージ手術を施行したものと, 施行しなかったもので一週後の赤血球数の変動と胃粘膜障害の程度を比較観察した.
そのほかにコーチゾン連続投与中拘束ストレスを加え, その際に合併する胃粘膜障害に対する両側幹迷切とドレナージ手術の効果についても検討した.
いづれの実験でも迷切ドレナージを施行したものでは, 施行しなかったものに比較して明らかに粘膜障害の程度が少なく, 糜爛からの失血の程度も少なかった.

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