抄録
石灰乳胆汁5症例を組織学的に検討し, ついで本症の胆嚢組織像をより明確にするために本症と同様に胆嚢管閉塞が存在する慢性萎縮性胆嚢炎の胆嚢組織籐と比較検討した.その結果, 本症における胆嚢粘膜の剥脱は軽度でRASや粘液腺形成もより多くて筋層は肥厚性であった.漿膜下層は対照に認められるような結合織の増生や血管の閉塞性病変もなく, 炎症は軽度で炎症細胞浸潤は粘膜層に限られてみられた.この成績より本症の胆嚢は胆嚢管閉塞が存在するにもかかわらず, 形態的に良好に温存されていることが特徴的であった.これら成績に基づいて胆嚢管の閉塞状態と胆嚢病変との関連性を検討し, さらに石灰乳胆汁の生成機序について考察を加えた.