抄録
食道静脈瘤における食道の動態を, 食道機能検査法としての食道内圧・pH測定を用いて正常43例と食道静脈瘤47例について比較検討した. 本症の特徴は, 静止圧曲線では下部昇圧帯圧の低下と食道胃圧差の増大であり, pH曲線では食道胃pH差の減少である. また内圧変化では陽性波の伝達機序は保たれているが, 食道各部の陽性波の波高の平低化と食道胃接合部における陰性波の波高の平低化である. これらの特徴は本症における食道の逆流防止機序の抑制や食道蠕動運動の減弱および食道胃接合部における開口機序の抑制を示している. これら本症の病態生理学的な所見は, 食道静脈瘤の破綻に影響を及ぼすものと考えられる.