抄録
1976年から10年間の単発大腸癌145症例を前期と後期に分け, その臨床病態の変化を検討した. 大腸癌の症例数は前期に比べ後期では2.5倍と著明に経年的に増加した. 発生部位も直腸癌の比率が減少し, S状結腸が増加した. 術式面でも, 結腸癌と異なり直腸癌では, 直腸切断術が減少し前方切除などの肛門温存術式が増加した.
大腸ポリープの癌化に関する研究として, 正常大腸粘膜, ポリープ, 大腸癌のH3-thymidine標識像による細胞増殖動態を比較検討したところ, ポリープでは正常粘膜にある増殖帯と機能帯との区分が消失し, 組織異型度に相関して異常増殖像を生じ, ポリープ癌では癌の標識態度とほとんど差がなくなることを認めた.