抄録
大腸癌肝転移の切除方針につき, 1968年から1986年までに当科で切除した症例を, 臨床的, 病理組織学的に検討した. 切除17例の術式は部分切除5例, 1区域切除3例, 2区域切除4例, 拡大右葉切除5例であり, 11例が最長3年8ヵ月を含めて生存中であるが, 部分切除を行った5例中3例は残肝再発をきたした. また, 8例 (9検体) で転移巣の周辺肝を病理組織学的に検討したが, 3例に肝実質, 門脈, および胆管内の腫瘍遺残病巣をみとめた. これら臨床的, 病理組織学的検討の結果から, 大腸癌肝転移に対する切除方針は, たとえ病巣が小さくても部分切除では残肝再発の危険性が高く, 可及的に広範囲の切除を施行すべきであると考える.