1989 年 22 巻 4 号 p. 1027-1030
1983年から5年間に当科で行った肝切除例136例について, 65歳以上と未満に分け, 術前の肝予備能について検討した. 65歳以上は24例, 17.6%であった.
血清GOT, 総ビリルビン, コリンエステラーゼ, アルブミン, ヘパプラスチンテスト, プロトロンビン時間には差を認めなかった.
ICG 15分値, Rmax値は高齢者で有意な異常を示した. 術後の肝不全発生率は高齢老において高かった. 高齢者の肝不全例は4例であったが, いずれもICG 15分値15%以上, Rmax値0.4以下であった.
以上より, 術前肝予備能のうちでもICG 15分値, Rmax値の両者が異常を示す例では, 術前後の適切な肝庇護療法とともに, 肝切除量を最小限にとどめた上で, 術後の肝不全発生に十分な監視と対策が必要と考えられた.