日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
画像上2つの異なった所見を呈した膵多発性insulinomaの1例
早川 哲史品川 長夫岩井 昭彦岡田 祐二水野 裕支由良 二郎
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 23 巻 10 号 p. 2415-2419

詳細
抄録
Insulinomaは外科的切除が原則であるが, 多発性発生の症例もあり, 外科的切除を困難なものとしている.今回われわれは, 異なった画像所見を呈した多発性insulinomaの1例を経験したので報告する.症例は26歳女性で, Wippleの3徴にてinsulinomaと確診し, 局在部位を検索した.腹腔動脈造影では膵体部に局在が疑われた.しかし, 腹部超音波検査, 超音波内視鏡では膵頭部に局在が疑われた.このため, Ca負荷経皮経肝門脈採血法を施行し, 膵体部と膵頭部に多発性のinsulinomaが疑がわれた.膵頭部, 膵体部の多発性insulinomaの可能性を考慮し, 開腹術を施行した.腫瘍は膵頭部, 膵体部ともに認められ切除した.組織診では膵頭部, 膵体部両腫瘍ともinsulinomaであり, 膵体部のinsulinomaは血管に富んでおり, 膵頭部の腫瘍は強度の硝子様変性を認めていた.画像上の相異は, この組織像の相違によるものと考えられた.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top