抄録
Insulinomaは外科的切除が原則であるが, 多発性発生の症例もあり, 外科的切除を困難なものとしている.今回われわれは, 異なった画像所見を呈した多発性insulinomaの1例を経験したので報告する.症例は26歳女性で, Wippleの3徴にてinsulinomaと確診し, 局在部位を検索した.腹腔動脈造影では膵体部に局在が疑われた.しかし, 腹部超音波検査, 超音波内視鏡では膵頭部に局在が疑われた.このため, Ca負荷経皮経肝門脈採血法を施行し, 膵体部と膵頭部に多発性のinsulinomaが疑がわれた.膵頭部, 膵体部の多発性insulinomaの可能性を考慮し, 開腹術を施行した.腫瘍は膵頭部, 膵体部ともに認められ切除した.組織診では膵頭部, 膵体部両腫瘍ともinsulinomaであり, 膵体部のinsulinomaは血管に富んでおり, 膵頭部の腫瘍は強度の硝子様変性を認めていた.画像上の相異は, この組織像の相違によるものと考えられた.