日本消化器外科学会雑誌
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大腸癌肝転移からみた原発巣における局所免疫能とプロスタグランジンE2との関係に関する研究
洲之内 広紀
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1990 年 23 巻 6 号 p. 1220-1231

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抄録

大腸癌の肝転移と原発巣局所の免疫能に対するPGE2の役割を大腸癌46例 (非肝転移32例: GruopA;肝転移14例: GroupB) を対象に検索した.腫瘍灌流静脈血 (V), 動脈血 (A), 末梢血 (PB) を採取し, 血中PGE2値をRIA法にて測定した.その結果V中PGE2値 (119.1pg/ml) はA (15.4pg/ml) およびPB (13.4pg/ml) に比較して明らかに高値を示した.PGE2V/A比 (灌流静脈血PGE2値/動脈血PGE2値) を算出すると, GroupA (13.3±2.4) ではGroupB (5.6±0.6) に比較して, 有意に高値を示した.次に病理組織学的 (炎症細胞浸潤の程度), 免疫組織学的 (T-cell subsets), 生化学的 (PGE2局所不活化率) に局所免疫とPGE2との関係を検討した.肝転移群では細胞浸潤の程度, IL-2receptor陽性細胞数, PGE2不活化率いずれも低い値を示した.以上よりPGE2が局所免疫を低下させることにより, 肝転移の成立しやすい原発巣局所の環境が作られていると考えられた.

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