抄録
当科で治癒切除された食道癌37症例を対象として, 食道癌組織内epidermal growth factor (EGF) の発現の有無と病理組織学的因子, 予後およびDNA ploidy patternに関する検討を行った. EGFの発現には酵素抗体染色法を, またDNA ploidy patternの測定には蛍光顕微測光法を用いた. 結果:(1) EGF陽性群は陰性群に比べ有意に予後不良であった.(2) 組織型別では高分化型扁平上皮癌でEGF陽性率が高率であった.(3) EGFの発現は壁深達度, リンパ管侵襲度との間に有意な相関関係を示した (p<0.05).(4) EGF陽性例に高次リンパ節転移陽性例が多い傾向を認めた.(5) DNA ploidy patternとの相関では, diploid patternに比べ, non-diploid patternにおいてEGF陽性例の増す傾向を認めた.結論:(1) EGFは癌の増殖分化に対して重要な役割を担っていると考えられた.(2) EGFは食道癌の予後に影響を及ぼしているものと考えられた.