日本消化器外科学会雑誌
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多発食道癌症例の臨床病理学的検討
溝渕 俊二加藤 抱一日月 裕司渡辺 寛板橋 正幸廣田 映五山口 肇
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1991 年 24 巻 9 号 p. 2320-2325

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抄録

最近5年間に切除された術前未治療の原発性食道癌239例中, 多発食道癌は45例 (18.8%) であった. 男女比は14.0: 1と単発癌の5.5: 1に比較して男性に多い傾向を示した.平均年齢は58, 8歳であり単発癌63.2歳に比較して有意に低値であった.他臓器重複癌の内訳で多発癌症例に有意に咽頭癌が多かったこと, 喫煙者の割合と喫煙本数が多発癌症例に有意に高く, びまん性に高度のdysplasiaが多発癌症例に多かったことなどから, 多発食道癌の発生は, 内因性より外因性機序がより強く関与していると考えられた.多発癌45例中42例に副癌巣として表在癌を認め, また副癌巣の46%が主癌巣の口側に位置した.副癌巣の75%がep癌であることから, 切除時癌遺残に注意を要すると考えられた.予後に関して, 4年生存率が多発癌39.3%, 単発癌40.1%とほぼ同値であったことから, 多発癌そのものは, 単発癌に比べて悪性度は高くはないことを示すものと考えられた.

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