1991 年 24 巻 9 号 p. 2414-2418
症例は35歳の女性で悪心・嘔吐を主訴とし, 空腹時血漿ガストリン値が高値, セクレチン負荷試験陽性でZollinger-Ellison症候群と診断された.腹腔動脈造影にて膵頭部に腫瘍濃染像を認め, 選択的動脈内セクレチン注入試験により胃十二指腸動脈が栄養動脈と判断された.術中所見として, 膵頭部に3個の腫瘤を認め, うち1個は術前の血管造影時の腫瘍濃染像と一致すると思われた.手術は膵頭十二指腸切除を施行し, 腫瘍切除後の術中セクレチン負荷試験では陰性であることを手術終了前に確認した.組織学的検索にて, ガストリノーマ原発巣は直径5mm大で十二指腸粘膜下に存在し, 術中に認めた腫瘤はそのリンパ節転移と診断された.術後5か月目のセクレチン負荷試験でも陰性であった.本症例では選択的動脈内セクレチン注入試験と術中セクレチン負荷試験の併施により腫瘍の完全切除を行いうると考えられた.