日本消化器外科学会雑誌
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後腹膜灌流が有効であった感染性壊死性膵炎の1例
伊藤 俊哉千葉 憲哉井上 啓爾元島 幸一山口 孝角田 司兼松 隆之
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1992 年 25 巻 9 号 p. 2397-2401

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抄録
症例は50歳の男性で, 腹痛, 発熱を主訴として来院し, 諸検査の結果, 重症急性膵炎と診断され, ICU管理のもとで輸液, 薬剤, 高圧酸素療法を行う. その結果, 全身状態と臨床検査成績は急速に改善の方向に向かった. しかし, 入院3週目より, 再び腹痛, 高熱力が出現し, WBC15,500, CRP強陽性, computed tomographyによる画像所見の増悪傾向を示したので, 感染性膵壊死の診断で開腹した. 手術は後腹膜ルートで膵を含む後腹膜腔に存在する融解した感染壊死組織を用手的に除去し, 術後に持続的後腹膜灌流を行った. 後腹膜灌流期間は8週を要した. なお, 壊死巣よりStaphylococcus aureusを検出した. 本法は今までに例をみない新しい術式であり, その意義は後腹膜の感染壊死巣の浄化とともに, 術後に新しく産生される感染壊死物質や生物学的活性物質の排除であり, その結果, 創傷治癒が促進され, 全身状態が改善される.
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