日本消化器外科学会雑誌
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肝細胞癌切除後胸水貯留症例の検討
永野 浩昭佐々木 洋今岡 真義桝谷 誠三石川 治大東 弘明古河 洋甲 利幸平塚 正弘亀山 雅男小山 博記岩永 剛
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1993 年 26 巻 1 号 p. 51-55

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抄録
肝細胞癌切除症例115例において, 肝切除術後の右側胸水貯留の成因について検討した.対象全症例における, 胸水貯留症例, 非貯留症例の2群間の背景因子の検討では, 術前肝機能, 切除量, 手術時間, 出血量については, 差がなかったが, 胸水貯留例中の肝右葉脱転例の頻度は非貯留例に比べ有意に高かった (p<0.01).次に, 肝右葉の脱転を施行した86症例の検討では, 術前肝機能としてのICGR-15不良症例 (p<0.05) と, 術後の腹水大量貯留症例 (p<0.01) の2点において, 有意に術後の胸水貯留症例が多かった.また胸水貯留症例3例での胸水および腹水の生化学検査値は, ほぼ同様の値を示した.以上より肝切除後胸水貯留症例は肝脱転施行例, その中でも肝機能不良例, 術後腹水が多い症例に多く, その発生機序は手術操作によるリンパ路と横隔膜の機械的な損傷にもとづく, 腹水の胸腔内への流入であることが示唆された.
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