1993 年 26 巻 12 号 p. 2874-2878
症例は48歳の男性で腸閉塞症状にて入院した. 腸管の減圧とともに大腸内視鏡検査, CT検査などにより虫垂癌, 虫垂S状結腸瘻, 虫垂膀胱瘻の術前診断が可能であった. 開腹手術を施行したがすでに腹膜播種が存在し治癒手術は不可能であり回盲部切除術, 虫垂S状結腸瘻, 虫垂膀胱瘻各摘除術を施行した. 現在術後癌化学療法を施行中である. 瘻孔を形成した虫垂癌は本邦で本症例を含め15例が報告されている. 瘻孔形成部位は皮膚, 回腸の順に多かった. 組織型では粘液産生癌が多く, 外方浸潤傾向のため瘻孔を形成しやすいと思われた. 15例のうち治癒手術と報告されているものが4例みられたことから, 瘻孔を形成した虫垂癌でも適切な外科治療により治癒の可能性が示唆された.