日本消化器外科学会雑誌
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門脈圧亢進症における門脈血総胆汁酸ならびに酸素分圧・飽和度に関する検討
近森 文夫青柳 啓之渋谷 進高瀬 靖広深尾 立
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1993 年 26 巻 3 号 p. 836-841

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抄録

肝硬変症を原疾患とする食道胃静脈瘤症例24例を対象として, 経皮経肝門脈造影 (PTP) 施行時に, 門脈系静脈より採血し, 総胆汁酸値や酸素分圧・飽和度を測定し, その臨床的意義について検討した.1.門脈 (PV) の総胆汁酸値は, 上大静脈 (SVC) に比べて高い (p<0.01) が, その供給は主に上腸間膜静脈 (SMV) より受ける.SVCの総胆汁酸値は脾静脈 (SpV) と有意差を認めなかった.2.PVの酸素分圧はSVCと有意差を認めなかったが, PVの酸素飽和度はSVCに比べて若干高かった (p<0.05).SpVの酸素分圧・飽和度はPV, SMV, SVCに比べて高かった (p<0.01).3.食道静脈瘤の供血路としてSpVが大きく関与することが, PTPによって示された.4.硬化療法施行時に観察した食道静脈瘤血の色調は, 全例とも鮮血色であった.以上から, 食道静脈瘤にはSpVに近似した (PV, SMVに比べて総胆汁酸値は低いが, 酸素分圧・飽和度の高い) 静脈血が流れていると推論された.

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