日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
粘液産生性膵嚢胞腫瘍の拡張主膵管に上皮内癌が発生した1例
高橋 優臼井 律郎渡辺 新吉宮川 英喜本田 毅彦阿部 眞秀古川 徹
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 26 巻 3 号 p. 937-941

詳細
抄録

粘液産生性膵嚢胞腫瘍の拡張した主膵管に上皮内癌を認め, 免疫組織学的に診断できた症例を経験したので報告する.症例は76歳の男性で, 5年前より膵尾部嚢胞と主膵管の拡張を指摘されていたが, 最近, 血清CEA (7.7ng/ml), CA19-9 (90U/ml) の異常値, 膵嚢胞の腫大, さらに内視鏡的逆行性膵管造影検査で粘液の排出, 主膵管のびまん性拡張と透亮像を認めたため, 悪性化を疑い膵体尾部切除術を施行した.嚢胞は膵体尾部の全域に多発し, 割面で主膵管と交通していた.切除標本1.5mm間隔で全割し組織学的に検討すると, 嚢胞壁と主膵管はmild dysplasiaを示していたが, 主膵管上皮の一部に核腫大, クロマチン増量, 核小体明瞭, 細胞極性の消失した細胞群を認め, 上皮内癌と診断した.免疫組織学的検索では, CEAは上皮内癌の細胞腺腔側と細胞質内部に強く染色されたが, 嚢胞部分ではほとんど染色されなかった.一方, CA19-9は上皮内癌と嚢胞の細胞腺腔側に染色された.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top