1995 年 28 巻 10 号 p. 2002-2006
発育経過を追跡し, 胃造影X線検査所見からdoubling timeの測定が可能であった胃筋原性腫瘍の2例を経験した. 症例1は56歳男性. 上部消化管透視で胃噴門部に腫瘍を指摘され, 約3年の経過観察の後に胃局所切除を施行した. 病理組織診断はsmoothmuscle tumor of undeterminate malignantpotential (以下, STUMPと略記) であり, doubling time (以下, DTと略記) は4.5か月であった. 症例2は49歳女性. 上部消化管透視で胃体上部に腫瘍を指摘され, 約1年7か月の経過観察の後に胃局所切除術を施行した. 病理組織診断はSTUMPであり, DTは25.4か月であった. 核DNA定量では2例ともdiploidパターンを示した. 胃筋原性腫瘍の良悪性の判定は病理組織学的には困難なこともあるが, 発育速度は生物学的悪性度を表す指標として有用といわれており, DTからは症例1は平滑筋肉腫, 症例2は平滑筋腫として臨床的には取り扱って厳重に経過をみるべきと考えた.