日本消化器外科学会雑誌
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膵頭部動静脈奇形の1切除例
杉森 志穂中島 祥介金廣 裕道吉村 淳高 済峯中野 博重打田 日出夫
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1995 年 28 巻 5 号 p. 1090-1094

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抄録

膵頭部の動静脈奇形 (以下, AVM) の1切除例を経験したので報告する.患者は36歳の男性.タール便と激しい上部腹痛を主訴に近医を受診, 精査目的に当科に入院した.入院時検査では, 貧血を認める以外に異常所見はなかった.血管造影検査で, 膵頭部に一致した網目状の血管増生と流入する動脈の拡張, 門脈の早期描出が認められ, 膵頭部AVMと診断した.超音波カラードップラー法は血管性病変の診断や術中切除範囲の決定に非常に有効であった.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本の病理組織には大小不同の異常血管の集簇を認め, AVMと確診した.
本邦での膵領域のAVMの報告例は, 我々の検索しえた範囲では40例である.消化管出血を主訴とすることが多いが, 複数の流入血管を有し動脈塞栓術では根治的治療とならないことがあり, 全身状態が許す限り切除術が望まれる.

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