我々は上行結腸のT細胞由来の悪性リンパ腫を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する. 症例は84歳の女性.主訴は右下腹部痛, 発熱. 現病歴は平成3年9月主訴出現し, 近医にて, 右下腹部腫瘤を指摘され当科紹介入院となる. 入院時現症: 右下腹部に4×5cm大の弾性硬, 可動性不良, 表面やや不整の腫瘤を触知した. 表在リンパ節は触知しなかった. 注腸造影X線検査, 腹部CTにて上行結腸癌と診断し, 平成3年10月18日手術を施行した. 手術所見は上行結腸に手拳大の腫瘍を認め, 右半結腸切除術と大腸癌のD2に準じたリンパ節郭清を行った. 切除標本では腫瘍は5.0×5.5cm大で, 病理組織所見では, 腫瘍細胞は, UCHL-1 (T) 陽性, L26 (B) 陰性で, T細胞性悪性リンパ腫と考えた. 大腸原発の悪性リンパ腫はまれで, ほとんどがB細胞由来とされておりT細胞由来のものは極めて少なく, 予後も不良とされ, 本例も2年後に再発死した.