日本消化器外科学会雑誌
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上腹部自律神経叢切離および全迷走神経切離の内臓血行動態および門脈血中VIP濃度に及ぼす影響に関する実験的研究
橋本 興
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1996 年 29 巻 4 号 p. 813-818

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抄録
上腹部自律神経叢切離に伴う下痢の発生機構を, イヌを用いて内臓血行動態より全迷走神経切離 (以下, 幹迷切) と比較検討した.自律神経叢切離兼幹迷切群, 自律神経叢切離単独群, および幹迷切単独群を作製し, 十二指腸, 小腸, 膵組織血流量を水素ガスクリアランス法にて, 門脈血流量を超音波トランジットタイム血流計にて測定した.さらに門脈血中vasoactive intestinal polypeptide (以下, VIP) 値を測定した.自律神経叢切離兼幹迷切群および自律神経叢切離単独群においては, 全例に水様性下痢が発生した.十二指腸, 小腸および門脈血流量は減少し, 膵血流量および門脈血中VIP値は増加した.幹迷切単独群では, 下痢は認めなかった.十二指腸, 小腸血流量に変化なく, 膵, 門脈血流量は減少し, 門脈血中VIP値は増加した.以上より自律神経叢切離により内臓血行動態の変化が認められ, 術後下痢の発生原因に関与していることが示唆された.
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