日本消化器外科学会雑誌
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腹腔動脈起始部に狭窄を伴った膵頭部癌の1例
術中肝動脈血流量測定の意義
道家 充加藤 紘之本原 敏司奥芝 俊一高橋 利幸
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1996 年 29 巻 4 号 p. 838-842

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抄録

腹腔動脈起始部に正中弓状靱帯による狭窄を伴った膵癌に対し, 電磁血流量計で肝動脈血流量を測定しながら安全に膵頭十二指腸切除術を施行できた1例を報告する.症例は52歳の男性.上腸間膜動脈造影検査で, 膵頭部アーケードが著明に拡張し, 下膵十二指腸動脈, 胃十二指腸動脈を介して肝動脈, 脾動脈が描出された.大動脈造影側方向像で腹腔動脈起始部に腹側からの圧排狭窄を認め, 腹腔動脈起始部に狭窄を伴った膵頭部癌と診断した.術中の電磁血流量計による左肝動脈血流量は正常時20ml/秒, 胃十二指腸動脈遮断時20ml/秒, 総肝動脈遮断時4ml/秒, 胃十二指腸動脈と正中弓状靱帯切離後に26ml/秒であった.腹腔動脈起始部に狭窄を伴った患者の膵頭部切除時には, 肝動脈血流量を測定しながら, 手術操作をすすめることが術後合併症の予防に必須であると考えられた.

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