日本消化器外科学会雑誌
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教室における各種膵腸吻合法の合併症に関する一考察
萱原 正都永川 宅和荒川 元八木 治雄二上 文夫長森 正則北川 裕久太田 哲生上野 桂一宮崎 逸夫
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1996 年 29 巻 4 号 p. 853-857

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抄録

各種膵腸吻合法とその合併症ならびに腹腔内持続吸引ドレナージ法 (continuous intraabdominal suction drainage: CISD) の有用性について膵腸吻合143例 (膵頭部癌66例, 胆管癌40例, 乳頭部癌32例, 胆嚢癌5例) を対象に検討した. 膵嵌入 (I) 法が20例, 漿膜筋層切開膵管挿入 (II) 法が22例, 非切開膵管挿入 (III) 法が48例, 膵管空腸吻合 (IV) 法が53例であった. 膵液漏出はI, II, III, IV法でそれぞれ20%, 21%, 0%, 13%, 縫合不全は25%, 14%, 6%, 4%とIII, IV法の成績が良好であった. 膵液漏出は胆道癌で21%, 膵癌で6%, 縫合不全はそれぞれ14%, 5%と有意 (p<0.05) に膵癌で低率であった. 2か月以内の早期死亡はI, II, III, IV法でそれぞれ25%, 14%, 12%, 6%であり, IV法で早期死亡が少なかった. また, CISD未施行群では膵液漏出や縫合不全例で早期死亡が多かったが, CISD施行群では膵液漏出, 縫合不全と早期死亡との相関はなかった. 以上より, 膵管空腸吻合法とCISD法は膵空腸吻合法の合併症軽減に有用と考えられた.

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