1996 年 29 巻 5 号 p. 971-976
ヒト大量肝切除46例を対象とし, 病的肝の病態別に術後1か月までの肝機能検査, 特にalkaline phosphatase (ALPase) の動向を中心に比較し検討した. 対象は閉塞性黄疸肝の8例, 硬変肝の21例と正常肝の17例の3群に分類した. 術後経過中T-Bilが5mg/dl以上を呈した症例を肝不全例とした. 経過良好例でのALPaseの術後推移は, 術直後低下した後, T-Bilの低下と逆相関して上昇した. 術後 10日までのALPaseの上昇する程度は, 正常肝, 黄疸肝, 硬変肝の順であった. PTとALPaseの推移間には相関が認められなかった. 肝不全救命例では, T-Bilの低下に同期してALPaseの上昇がみられ, 死亡例では術直後よりALPaseは低値のまま推移した. これらより肝切除術後経過において, ALPaseの推移のモニタリングは, 肝再生にともなう胆汁排泄能の把握に有用で, 肝不全予知因子となりうることが示唆された.