日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
胃切除術後の門脈大循環短絡症の2例
板東 隆文豊島 宏
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 29 巻 8 号 p. 1782-1786

詳細
抄録

消化性潰瘍に対する胃切除術後21年と31年を経て, 門脈大循環短絡のため高アンモニア血症と脳波異常を伴う高度意識障害を呈した2例を経験した.58歳と65歳の男性で, 2例とも神経学的に異常を認めず, ICGを除く肝機能は正常で, 経動脈性門脈造影で胃冠状静脈と左腎静脈の間に太い短絡を認めた.解除術中に測定した門脈圧はおのおの140mmと103mm salineで正常範囲内にあり, 肝の組織検査で肝硬変を認めなかった.2例とも短絡解除術直後から血中アンモニア値は正常となり, 高度の意識障害は著明に改善した.短絡解除術前みられた肝萎縮, 肝動脈末梢のcorkscrew像が消失し, ICG停滞率も改善した.著者らは, 門脈大循環短絡は胃切除術後の胃冠状動脈の局所的内圧上昇が原因ではないかと推定している.内外の文献を検索した限りこのような症候群はみられないので, 胃切除術後の非常に稀な合併症として報告する.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top