1997 年 30 巻 12 号 p. 2247-2252
1985年1月から1995年12月までに肝切除を施行した肝細胞癌67例を, 肝癌取扱い規約でいう初期の高分化肝細胞癌, 境界病変を有する境界病変併存群(BL群)12例, 肝内転移群 (IM群) 11例, 多中心性発生群 (MO群) 3例と, 単発群 (St群) 41例とに分け各群の臨床病理学的特徴ならびに切除後予後を比較検討した. BL群, MO群はIM群, St群に比べ肝硬変が高率にみられた. 肝細胞癌と併存病変は, BL群, MO群に比べIM群では同一区域に存在する頻度が高かった. 門脈浸潤はIM群が他群に比べ高率であった. 生存率はSt群, BL群はIM群に比べ良好であるが, St群,BL群でも門脈浸潤陽性例では2年以内の再発が高率であった. St群の5年無再発生存率は45.8%で, BL群は3年以内に,IM群は2年以内に全例再発した. 以上のことから多中心発生群, 境界病変併存群は肝硬変の頻度が高く, その切除後予後は肝内転移群にくらべ良好であるが, 残肝再発率は高いことが示唆された.