日本消化器外科学会雑誌
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MASA法による変異遺伝子の検出とその臨床応用
林 尚子江上 寛高野 定小川 道雄中森 正二今岡 真義中村 祐輔
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1997 年 30 巻 4 号 p. 897-900

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抄録
Mutant-allele-specific amplification (MASA) 法により, 約正万個の正常細胞中に含まれる遣伝子変異をもつ1個の腫瘍細胞を簡便に検出することができる. 組織学的にリンパ節転移陰性と診断された大腸癌手術症例120例について, リンパ節に原発巣と同じ遺伝子変異が存在するか否かMASA法を用いて検討した. 原発巣にK-rasあるいはp53遺伝子の変異を認めたのは71例であり, 遣伝子診断でリンパ節転移陽性とされた37例中27例は術後5年以内に再発し, 転移陰性とされた34例は全例において再発はみられず, 遣伝子診断によるリンパ節転移と予後には高い相関が認められた. また, 膵癌の早期診断を目的とし本法を用い, 膵液中の変異K-ras遺伝子の検出を行ったところ, 膵癌の80%価(5例中4例) に膵液中から変異を検出できた. 本法を臨床応用することで, 正確な予後判定や癌の早期診断が可能になるものと思われる.
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